「・・・さ、さみぃ・・・」

「大丈夫か?エース」

エースはガチガチと奥歯を震わせた。
ミナガルデを出た一同はドンドルマを目指し、極寒のフラヒヤ山脈を行く。
ガタガタと荷台に揺られ、雪の降るなかをひたすら走る。

「だぁからいったじゃないっすかー」

ルピタはそう言ってエースに最後のホットドリンクを手渡した。
エースは震える手でそれを受けとると、ゴクゴクと飲み干して
またガチガチと奥歯を震わす。

「・・・んだよ。っ全然あったまんねぇじゃねーか・・」

「流石のホットドリンクも半裸には効かないと思いますよー。ぶふぅ!」

「・・い、今笑いやがったな・・・あとで、覚えとけ・・」

「見栄はらないで、コート買えば良かったのに。ぶふぅ!」


それはさかのぼること数日前。
ミナガルデから発つときの話だ。

『コート?』

『はい!今から向かうフラヒヤ山脈は滅茶苦茶寒いっす!だから、コート買わないと死にますよ?』

『いらねぇよ。んなもん!俺の体は火で出来てんだぞ?』


そうして今に至る。
エースはそんな事を言ってコートを買わなかったことを激しく後悔した。

「あ、その。エースさん!!良かったら使ってください!!」

そんなエースにコマチが差し出したのは、フワフワで暖かそうなマフラー。

「お、おお。あ、ありがとう」

エースはそれを受けとると、首に巻く
が、
首は暖かいものの、他が寒かった。
しかし、せっかく貰ったので
笑ってみせる

「あ、あったけぇよ」

「い、一応、手編みです・・・!」

コマチはそう言って顔を赤らめると、顔を背ける。

「もうすぐポッケ村につくよ。今日中に山を越えるのは無理そうだ。一泊して明日の朝イチで出発しよう!」

アーティアがそう提案した。

「村についたらマフモフ着てくださいよ?エース隊長」

「お、おぅ。なんでもいいから着るわ」



そうこうしてる内に、一同はポッケ村につく。
エースはルピタが用意したマフモフと呼ばれる防寒具を急いで着用した。

「あったけぇー!」

「でしょ?マフモフはとにかくあったかいんすよ!」

そう言ったルピタも防具の上からマフモフを着用した。
雪ん子のような格好に、エースは思わず吹き出す。

「ぷっ!!」

「・・なんで笑うんすか?キックしますよ?」

それから皆はマフモフを着用し、ポッケ村の内部へと進む。
雪深いその村の村民は、皆同じような防寒具に身を包んでいた。

「オババ!!!」

「おお!!アーティア帰ったのかい?・・・こりゃあ驚いた!!ルピタじゃないか!!」

「オババーー!!久しぶりーー!!」

アーティアが村の奥で焚き火を起こす背の小さな老婆に話しかければ
老婆は目を輝かせていた。
その老婆の隣には、赤いコートを着たアイルーがいて
丁寧に頭を下げる。

「おひさしぶりですニャ」

「わぁあ!!ネコートさぁん!!かわいいよぅ!相変わらずかわいいよぅ!」

「疲れたじゃろ?ささっ焚き火の元へ。そちらのお連れさん方もどうぞこちらへ」

老婆に呼ばれたエース、コマチ、ジェイクは戸惑いながらも焚き火の元へと歩み寄る。

「オババ!紹介するね!こちら恩人のエースさん!んで、こっちが新大陸でハンターやってるジェイクとコマチ!」

「そうかい。ワシはこのポッケ村の村長をやっております。ルピタがお世話になっているみたいで、感謝しております」

老婆はそう言って頭を下げた。
そして一同に暖かいミルクティーを差し出した。

「わぁ!ポポミルクのミルクティーだぁ!」

ルピタはにんまり笑ってそれを一口。

「それはそうと、チチカナはどうしたんじゃ?一緒ではないのか」

その言葉に、ルピタはコトリと木製のカップを置く。

「実はね。オババ・・・」

ルピタはポツポツとオババに事を説明する。

「そうかい。大変だったねぇ・・・。」

「だから僕たちは明日の朝イチでドンドルマへ向かおうと思ってるんだ。」

「今夜は吹雪になる。ゆっくり休んで、気を付けてお行きよ?」

「うん・・・」


それからアーティアは婚約者であるマリオンの元へ、ルピタ達は彼女の生家へと向かう。

「今日はここで一泊!それからドンドルマへ向かいますよー」

ルピタの部屋に集まった一同に、彼女はそう告げた。

「それにしてもルピタがこんな雪国生まれだとは驚きだな!」

ジェイクはそう言って笑う。

「そうかなー?・・・あ。」

ルピタはそう言って立ち上がると、そそくさと部屋を出ていく。

「どこ行くんだー?」

「ん?ちょっとね!皆はご飯でも食べに行ってくれば?ポッケ村にも最近アイルー食堂出来たみたいだし」

ルピタはへへっと笑うと部屋を後にした。




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