「あれ?」
ユクモ村で迎える朝。
エースが起きれば、ルピタ、チチカナ、ジェイクの姿はなかった。
代わりにいたのは
村長の娘。
コマチ。
「あ、え、と。お、お、おはようございまぷ!!」
しかも盛大に噛んだ。
「あ、おぅ。おはよう」
なぜこうなったかの経緯は
さかのぼる事昨日の夜の話だ。
『あっはは!まさかコマチがエース隊長を気に入っちゃうなんてねー!』
『わっ笑わないで下さい。ルピタさん・・・』
エースが眠っているのを尻目に、三人はコマチの恋バナで盛り上がる。
『だと思ったんだよなー!』
『だからといって、本人の目の前で言おうとするのは感心致しませんことよ。ジェイク』
『わりぃ、わりぃ!にししっ!』
ジェイクは悪びれる様子もなく笑う。
『それじゃあさ!明日私達は三人でどっか行くから、その間にエース隊長と二人で色々語ったら?』
ルピタの提案に、コマチはブンブンと首を横に振る。
『むむむむっ無理です!!ふっふふふふ二人きりなんてっっ!!』
顔を真っ赤にさせるコマチに、チチカナがふわりと微笑む。
『それは良いですわね。二人で村散策でもして少し話せば、コマチも少しは打ち解けることができると思いますわ。エース隊長はとてもお話ししやすい方ですよ』
『で、でもっ・・・』
『だってコマチ、俺たちが居たらぜってぇエースと喋らないだろ?ずっとチチカナの影に隠れてそうだし』
『そ、それは・・・』
「まぁコマチにとって多少荒療治かもしれないけど、一気に距離は縮まるよ!』
こうして現在に至る。
エースは目の前でうつむく少女に口を開く。
「えっと・・・確かコマチだよな!起こしに来てくれてありがとう!」
エースがそう言えば、ビクンと肩を震わすコマチ。
なんとか顔を上げエースを見つめれば、やっぱりへの字に曲がる口。
「えっ!?あ・・わりぃ!俺なんか変なこと言ったか!!?」
泣きそうなコマチを前に、オロオロするエース。
そんな彼に
違う。
と言いたくてもうまく言葉に出来ないコマチの黒目が左右に忙しく移動する。
「あ、あの!・・・すいません!!だ、大丈夫なので!!」
なんとか放った言葉にエースはホッとすると、コマチに太陽のような笑顔を見せた。
しかしその顔に彼女はさらに赤くなり、またもや口をへの字に曲げる。
「わわわわりぃ!!俺なんかやったか!?」
エースは朝から焦りまくりだ。
「二人大丈夫かなぁー?」
「ウフフ。大丈夫でしょう」
「コマチのあの人見知りの酷さは天下一品だからなぁ」
三人はそういいながら渓流を歩く。
「二人の事は、二人にお任せしましょう。それより今は任務に集中です」
「「へぇーい」」
チチカナの言葉に、ルピタとジェイクは同時に返事をした。
何処に行くか迷っていたところ、村長にある任務を任された三人。
最近、渓流で謎の団体が目撃されるらしい。
それは皆銀色に輝くリオレウスの希少種、シルバーソルの防具に身を包んだ集団で、皆ランスを所持しているという。
別に何をするわけでもなく渓流を散策しているそうなのだが
タケノコ狩りに出掛けた村人から
なんだか気味の悪い集団で、怖くてタケノコも取りにいけない。
と村長に依頼があったそうだ。
それを調査すべく、三人は渓流に行き先を決定した。
「いないねえーシルバー軍団」
「ギルドマネージャーにも聞いたんだけどよ。そいつらはギルドを介してねぇらしんいんだ。もしかしたら新手の密猟グループなのか?」
「でも今のところ特に被害はないのですわよね?もし密猟グループならもう被害が出ていてもおかしくはないですわ」
三人はそう言いながら渓流の奥へと進んでいく。
その頃エースは
「うめぇえ!これお前が作ったのか!?」
「は、はい・・・」
コマチが用意した
特産キノコのスープと、タケノコの炊き込み御飯を堪能していた。
「ごちそうさま!ありがとなコマチ!」
「ーーーっ!!」
それを全て平らげたエースが笑えば、コマチは顔を真っ赤にして片付けようとした食器を落としてしまう。
「おい。大丈夫か!?」
「だだたいしょぶです!」
エースはそんなコマチに困惑しながらも片付けの手伝いをした。
「それにしてもどこいったんだあいつら」
洗い終わった食器を拭きながら、エースは呟く。
「・・・み、皆さん。お、おつかいに出掛けました」
「おつかい?」
「はっ・・・はい。しばらくすれば、帰ってくる、かと」
「ふぅーん」
コマチの心臓はドクドクとうるさいほどになっている。
カタカタ震える手を必死でおさえ
ゆっくり口を開いた。
「あ、あの。み、皆さんが帰ってくる前に・・・。その、私が、村の案内でも・・しましょうか?・・い、いやならいいです!ごめんなさい!!」
早口で喋るコマチに、エースは困りながらも笑う。
「お、おぅ。じゃあお願いしようかな?村案内」
エースがそう言えば
コマチは赤くなりながらも頬を緩ませる。