「な、なんだこりゃあ」
「見たこともねぇ海王類だよい」
モビー内は騒然としていた。
一丸となってナバルデウスを仕留め、その死体を眺める
クルー達。
「それはナバルデウスっていうモンスターニャ。」
ポツリとリィリィが呟いた。
「お前。こいつの事を知ってんのか!?」
「知ってるもなにも・・・この折れた角。間違いないニャ。こいつはルピタ達にへし折られたあとニャ。こいつはボクたちの世界からやってきたニャ!!」
「ってこたぁ・・・」
そこへクルーの一人が足早にやってくる。
「これ・・・」
クルーの一人が震えた手で、ちぎれた縄を持ってきた。
それはルピタの命綱。
「・・・エースとチチカナの姿もねぇのかい?」
「はい・・・。どこにも見当たりません。3人とも海に・・・・海にっ飲まれちまったんだ!!」
その言葉にサッチは壁を殴った。
リィリィは俯いて、その場にへたりこむ。
「死んでニャいニャ。生きてるニャ。絶対に・・・3人とも生きてるニャ!!」
そう言うリィリィの瞳から大粒の涙が溢れ出す。 それはポタポタと木目調の床に染みを作った。
「リィリィ・・・」
サッチの目にも涙が浮かぶ。
モビー内は嗚咽やすすり泣く声で溢れた。
マルコは唇を噛みしめ、自室へと戻っていったのだ。
「・・・サッチ隊長。」
「なんだ?」
リィリィは隣に座るサッチに声をかけた。
「ボクがルピタと出会った時の話をしていいかにゃ?」
サッチはおぅ。とだけ返すと
その話に耳を傾ける。
「ボクは、元々違う旦那さんにキッチンアイルーとして雇われていたニャ。戦闘が苦手だったボクは料理を作る事の方が好きだったニャ」
「お前が作る料理・・・うめぇもんな」
サッチはそう言って眉を下げて笑う。
「ボクの料理を食べて笑顔になる旦那さんが大好きだったニャ。時に失敗して旦那さんを困らせてしまった事もあったけど・・・どんなときでも優しくボクを撫でてくれる旦那さんが・・・大好きだったニャ」
リィリィはそう言って上を向いた。
零れそうになる涙を必死で堪えようとするその姿に、サッチも胸を打たれる。
「でも、でも・・・。ある日を境に旦那さんは帰って来なかったニャ。いくら待っても、帰ってきてはくれなかったニャ。それからしばらくして、旦那さんの死を知ったニャ。村に帰ってきた旦那さんはモンスターに食い散らかされ・・・腕と足だけだったニャ」
たまらず溢れ出した涙がリィリィのふわふわした体毛を濡らす。
「ボクはそれから野良アイルーになったニャ。あんな辛い思いはもうしたくなかった。だから二度と誰にも雇われまいと誓ったニャ」
「・・・辛ぇ思いしてきたんだな」
サッチはそう言ってリィリィの頭をポンと撫でる。
「ある日森でモンスターに襲われたボクは怪我をしてしまったニャ。もう死ぬんだって思ったニャ。旦那さんに会えると思ったニャ・・・。でも、そこへ駆け出し装備のハンターがやってきてボクを助けてくれたニャ」
「・・・それが」
「そうニャそれがルピタだったニャ。怪我したボクを必死で看病してくれたニャ。傷が癒えボクが何も言わずに森へ帰ろうとすれば、ルピタはそれを止めたニャ。そして私のオトモになってほしいっていったニャ」
リィリィは俯いて顔を伏せる。
その小さな体はカタカタと震えた。