「ふぁあっ」

朝。エースは大きなあくびをして起き上がった。
見慣れぬ部屋。
そうか、俺は・・・

エースは寝癖でボサボサの頭をワシワシ掻くと、立ち上がる。
枕元に置いたテンガロンハットを被ると
窓から覗く海を見つめ、
そうか、俺はルピタ達の世界に来ちまったんだっけ。
と再認識した。

海を見れば
パイナップルとフランスパンが無償に恋しくなった。
あの豪快な笑い方をする偉大な白ひげも、この世界にはいないのだ。

皆どうしているだろうか？

エースは胸が締まるような感覚を覚えた。
ホームシックとはこういう事なのだろうか？


するとキィっと音を立てて扉が開いた。


「おはよう！起きてたんだなエース！」

入ってきたのはジェイク。
ルフィに似たこの少年を見れば、なんだかほっとする。
エースはおぅ。と短い返事を返しながらそう思った。

「もう昼だぞ？シシッ！エースはお寝坊さんなんだな！」

ジェイクは部屋にある大きな箱をガサゴソしながら笑った。

「もう昼か、だいぶ寝ちまった・・・。」

「まぁ、気にすんな！そうだ、飯にしよう！」

ジェイクはエースの腕を引っ張った。




「あのぉ。村長」

「ちょっとお聞きしたい事がありまして」

その頃ルピタとチチカナは村長の元へいた。
あのキノコの事を聞くためだ。

「どうしたんじゃ？」

村長はキセルをふかしながら、二人に視線を移す。

「キノコの事なんだけどー・・・」

「キノコ？」

「はい。見慣れぬキノコを発見したので」

「どんなキノコじゃ？」

「えっとぉ・・・。こう、なんていうのかな。いろんな色を混ぜたような色してて、無駄にでかくて・・・とにかく見たことないようなキノコなんだけど」

ルピタの話に、村長は目を見開いた。
くわえていたキセルをポロリと落とすと
ルピタに詰め寄った。

「そのキノコをみたというんか？」

「え、はぁ、まぁ」

「村長さん。なにかご存知なのですか？」

「あぁ。それは"トリップダケ"という伝説のキノコでな。ワシは見たことないが・・・まぁ、昔にハンター達のあいだで噂になった都市伝説のようなもんだ。」

村長の話にルピタとチチカナは顔を見合わせる。

「何時。何処で。どんな条件で生えるかは全て不明。それを食べると、その名の通り異世界へトリップしてしまうという。しかしだ。トリップできれば幸せなほうだ。それを食べたものは99%の確率で死に至るといわれているからだ」

「・・・え？」

「ドクテングダケの100倍もの毒があるといわれておる。ただの都市伝説かと思っておったが・・・まさか存在しておったとは・・・」

ルピタは顔が真っ青だ。
チチカナはニコニコ笑っている。

「あ、ありがと。そんちょー。」

「ウフフ。大変勉強になりましたわ」

ルピタとチチカナは緊急会議を始める。

「私たちとんでもないキノコ食ってたんだね」

「ウフフ。もしかしたら人生全ての運を使い果たしたのかもしれませんわね」

「そんな危険なキノコ。エース隊長に食わせらんないじゃん」

「まぁ。運次第ですわね。もしかしたらまた運良くトリップできるかもしれないですし」

そんな二人の元に、ジェイクとエースがやって来る。

「おーい！！」

「あ。ジェイク！エース隊長おそようございまーす！」

「おぅ。二人で何コソコソしてんだよ」

「それがですね・・・」

ルピタとチチカナが、先程村長に聞いたキノコの話をエースとジェイクに説明した。

「うへぇ。マジかよその話」

ジェイクが青ざめている。

「俺はキノコで死にたくねぇな」

エースもこころなしか、青ざめていた。

「どうしましょう？キノコ探しはやめたほうがいいかな？」

「食うのは止めるにしても、そのキノコが異世界に繋がってるのは確かなんだろ？取りあえず探してから考えてみるのはどうだ？」

ジェイクが呟けば、チチカナもそれに頷いた。

「それは一理ありますわね。食べなければ良いだけです。もしかしたら何か手がかりがあるかもしれませんわ」

「じゃあ今からソイツを探しに行くか。おい。お前達は何処でソイツを見たんだ？」

エースがルピタとチチカナに振る。

「えーと。渓流っすね」

「渓流に行くのには、まずユクモ村を目指さなければなりませんわ」

「そのユクモ村ってのは何処にあんだよ」

「船で２、３日航海すれば着きますわ。ここは孤島ですからねぇ。ちょっと時間がかかりますの」

そんな話をしている四人の耳に騒ぐ村人の声が聞こえてくる。

「交易船だぁ！！！」

「準備しろー！」

エースはふっと海の方へ視線を移す。
そこには大きな船が村へ近寄ってきた。

「交易船？」

「あ！交易船は色んな珍しいもんを、うちの特産品と交換してくれんですよー」

エースはルピタの話に、ふぅん。と返事を返す。