しかし目の前のチチカナは、それに反応する事はない。
彼女の狩猟笛は大剣を弾き、よろめくルピタに向かって更に打撃を繰り出した。

「っくそ!!」

エースがそれを阻止しようと、炎を纏うが

「エース隊長!!ダメです!!」

それを止めるルピタの声にハッとする。
その間に、狩猟笛の打撃がルピタの腹に到達した。

「ぐっ・・・つぅ!!」

ルピタの腹にめり込むその狩猟笛。
その重い一撃に、顔を歪める。
そして宙を舞う彼女の体。
ダンッと強く地面へ体を叩きつけられたルピタは
呻きながらも体を起こした。

「チチカナ・・・。」

弱々しく呟いた友の名前。
しかしその張本人は、非情に傷ついたルピタを見下ろすだけだった。

「ルピタ!!」

駆け寄ろうとするエースの前に舞い降りたのは、黒い龍だった。
ズドンと地面に着地すれば、ブワリと動く周りの大気。
エースはその風圧に耐えると、ギロリとその龍を見上げる。
自分より遥かに大きなそれは、エースを見下ろしクツクツと笑った。

「炎の青年よ。お前の相手はこの私がしてやろう。光栄に思いたまえ」

「っうるせぇ!!この化け物がっ!!」

エースはその拳に力を込めると、ミラボレアスに向かい放つ。
しかしその強靭な漆黒の外殻に守られる体に、ダメージは与えられなかった。

「っ!」

「温いな。お前の炎は温すぎる。」

ミラボレアスはそう言うと、ぐぐっとのけ反り
その口から火炎ブレスを吐いた。

「鏡火炎!!!」

エースは咄嗟に分厚い炎の壁を作るが、その威力の差に圧倒される。



「チチカナ!!私だよ!?目ェ覚ましてよ!!」

ルピタの叫びは、無情にもぶつかり合う
大剣と狩猟笛の音に掻き消されるかのように届かない。

「皆チチカナを救うために来てくれたんだ!」

「・・・」

「マーベルさんも、オヤジさんもっ、ジェイクもコマチも、エース隊長も、マルコ隊長も、サッチ隊長もリィリィも!!皆っチチカナを助けるためにっ!!っう!!」

ルピタは押しきられ、地面へと倒れこむ。
ざっざっと近づく足音に頭を起こせば、そこには無表情で狩猟笛を振り上げるチチカナが立っていた。

「チチカナっ・・・お願いだよ!!」

懇願の眼差しに、チチカナの動きが
ピクリと一瞬迷った。
その目に光が宿っては消える。
狩猟笛を構えるその腕がカタカタと揺れた。


「・・・ルピタ」


震える唇から紡がれる名前に
ルピタが目を見開いた。


「にゃっ!にゃっ!こやし玉こやし玉ーーー!!」

「うっわくせぇ!!なんだよその玉!!」

「こやし玉にゃ!この臭さでモンスターを撃退にゃ!!」

その頃、サッチとリィリィは飛竜相手にこやし玉で応戦中だった。
しかし飛竜はその過剰なこやし玉攻撃で逆上している。

「撃退っつぅか、逆にキレてねぇか!?」

「にゃ?そうかにゃ?・・・いや、ボクのスペシャル調合のこやし玉にかなうはず・・・」

そんなリィリィの尻に飛竜の火球ブレスの
炎が飛び火する。

「ぶぁちちちちちちーーー!!にゃーーー!!助けてにゃーー!!」

「うわーーー!!!ケツに火ぃつけてこっちくんなーー!!!」

そんなとき、飛竜がピクリと反応し上空を見上げる。

それは他の飛竜も同じで、皆上空を見上げていた。


「なんだ?」

マーベルはその異変に気付く。
共闘していた白ひげもピクリと眉を上げた。

「皆上空を見上げてやがる」

「グララ、なんだぁ?化け物の次は隕石でも落ちてくるってぇのか!」

分厚い雲がかかるその上空から覗く太陽。
それが地上を照らし出した。








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