バシルは空を見上げ、しばらくして
グテンと力なくその首を下げた。
そして瞳だけを上に向け、ニタリと一同に向かい
不気味な笑みを見せる。

それは狂気そのものだった。


「薄れゆく、意識のなか。私は夢を見た。大空を優雅に舞う黒き偉大なる飛竜が世界を支配する夢だ。その黒き龍は、私の全てを奪う代わりに生をくれると言った。私は迷わず頷いた。次に目を開けたとき、私は生まれ変わったのだ。息絶えた私の部下に今一度生を捧げると、私は言った。共に竜の時代を築こうと・・・。この世界は何処までも美しい。だからこそ人間などという下等種族が大きな顔をして生きていてはいけないのだ」

「・・・狂ってやがる」

マーベルはそんなバシルに眉根を寄せた。

「狂っている?私が?いや違う。狂気の根元は人間達だ。自分達が自然の中で生かされていることを忘れた下等種族。その欲深さ故に無駄な争いを産み、この世界を汚している。私達はそれを浄化してやろうと思ったのだ。まず手始めに、私達を殺したあの王国を潰してやったのさ。記憶に新しいだろう?シュレイド王国の終わりさ」

「・・・まさか!!」

マーベルはその言葉に目を見開く。
それは昔。この世界で莫大な権力を持ったシュレイド王国という国あった。
しかし、その大国は一夜にして崩壊したのだ。
城跡は見る影もなく、その地方には未だに晴れる事のない暗雲が立ち込めているという。

その原因は未だに不明であり、大きな厄災が国を飲み込んだと皆口々に言っていた。
しかし、それはこのバシル達が起こしたものだったのだ。


バシルは肩を揺らし、クツクツと含み笑いをしながら呟く。

「私達の野望に必要不可欠なものがもう一つあった。それは償いという名の元に封印された秘術。竜操術だ。それは太古の竜さえも操る禁断の秘術。長い旅だった・・・。そして見つけたのだ!!」


宮殿から続く長い階段に、バシルはギロリと視線を移した。
その先からは純白の衣類を身に纏った、見知れた人物が
フラフラと階段を下りてゆく。
カツン、カツンという無機質な音が
一同の耳にこだました。


「・・・チチカナ」

ルピタの口から滑り落ちるように放たれたその者の名前。
しかしチチカナはそれに反応することはなく、ただ黙って一同に虚ろな瞳を向けた。

「チチカナちゃん!!俺だよ!!サッチだよ!!」

サッチが駆け寄ろうとするのをマルコが止める。

「無駄だよい!あの目は完全に俺達の事なんか見えちゃいない」

マルコはギリッと唇を噛んだ。

「そ、そんな!俺は嫌だ!チチカナちゃんと戦いたくなんかない!」

「落ち着けサッチ!それは皆一緒だよい!!今俺達がすべきなのは・・・そこにいるあの男を倒すことだ!!」

マルコの言葉にバシルは愉快そうに笑った。

「面白いことを言う。私を倒すなどできるはずもない。何故なら・・・」

バシルはそう言うとぐぐっと体を屈めた。
そしてその姿がメキメキと変化していくのだ。

バキ、ゴキという耳障りな音と共に、バシルがみるみる変化していく様に
一同は声も出ない。
そして
バシルはついに巨大な龍へと姿を変えたのだ。


「私の名は、黒龍ミラボレアス。この世に厄災と破滅をもたらす者だ。それが私の新たな名だ」

ミラボレアスはそう呟くと、けたたましい咆哮をあげたのだ。
それはまるで、自分がこの世の絶対強者だと言わんばかりに・・・。



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あとがき&言い訳

すみません。
敵キャラが出しゃばりすぎました。
独白が長すぎですね(笑)
色々説明したくて喋らせましたが、書いてる内に意味不明に。

簡潔に言うと
バシルは黒龍に乗っ取られた。
です。←簡潔すぎ。

そして書いていてバシルってひとは
中二病っぽいな。と思いました。

では、色々と突っ込み所満載でしたが
次回もお付き合いお願い致します。





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