「今日で何日目だ?」

「多分一週間は過ぎてるよい」

「にゃあさすがに飽きたにゃあ」

モビーが停泊している港街を離れマルコ、サッチ、リィリィはミナガルデへ駐留していた。
さすがに大所帯の白ひげ海賊団全てがミナガルデへ駐留できるはずもなく、代表でこの二人と一匹がミナガルデへ駐留することになった。

「オヤジから預かった金がわりも、もう底つきそうだしなぁ」

サッチはそう言って手に持った麻袋を見つめる。
この世界の通貨を持たないマルコ達は
これで何とかしてもらえ
と白ひげから、宝石やら金やらを預かっていた。この世界でも宝石や金は貴重なものだ。
それを売ったり、または物々交換というような形で、マルコ達は今日までここで生活をしていた。

「マーベルさんは一体にゃんの任務についてるんにゃ?」


「さぁなー・・・」

「まぁとりあえず待つしかねぇよい。俺達はこの世界じゃ無知だからな」

マルコの言葉にサッチとリィリィは顔を見合わせため息をついた。

「それじゃあ気晴らしに観光でもするかにゃ?案内するにゃー」

「観光・・・もう五回以上はやってるぜ」

「・・・じゃあ、ボクのアイルー音頭でも見るかにゃ?」

「いや、それは百回以上見てるから遠慮しとくわ」

サッチとリィリィは項垂れる。
そんな中マルコだけは何かを考えているかのように神妙な面持ちだ。

「マールコ。なんでそんな怖い顔してんだよー」

「そうだにゃ。スマイルにゃ。マルコ隊長」

「ちょっと考え事だよい。少し外の空気を吸ってくる」


マルコは机に張り付くように突っ伏すサッチとリィリィを置いて部屋を出た。


外に出たマルコは、外の雰囲気に眉を上げた。
いつもと変わらぬ風景だが
何かが違う。
マルコの瞳に映る夕暮れのミナガルデはどことなく寂しく揺れていた。

「おっさん。今日はもう店じまいかい?」

「おお!あんちゃん!」

マルコは宿屋の近くにいる露店商のおっさんに声をかけた。
しばらくこのミナガルデへ駐留しているが、今日は比較的閉店が早いようにマルコには思えた。

「ギルドから警戒令が出てんだよ」

「警戒令?」

「例の集団知ってるか?ロックラックを襲った・・・」

「ああ。知ってるよい」

「そいつらが、今度はこの旧大陸のドンドルマを襲ったってぇ話だ。ギルドは警戒を強めてて、このミナガルデにも警戒令が出てるんだ。市場も早めに店を閉めてるみてぇだし。あんちゃんもあんまり出歩かねぇほぉが身のためだ」

おっさんは閉店作業を終えるとキセルをふかす。
そして煙を吐くのと同時にマルコへ視線を移した。

「ここだけの話だけどよ。その例の集団をギルドナイトが追ってるらしいんだ。もしかしたら、戦争になるかもしんねぇな」

「ギルドナイト?」

「なんだ。あんちゃんギルドナイトを知んねぇのかい?ギルド直属のハンター集団だ。化けもんみてぇなハンターが集まってるって噂だ」

「化けもん・・・ねぇぃ」

マルコはそう呟いてオレンジ色に染まる街並みを見つめる。




「よぉし!マルコ!リィリィ!飲みいくぞ!」

夜になり唐突にサッチが言い出した。

「ボクもう眠いにゃ」

「おぅおぅ!シケたこといってんじゃねーよ!たまにはこうよ、ぱぁーっと」

「サッチ。気持ちはわからなくもねぇが、もう寝ろよい。いつまでここに居なきゃなんねぇかまだ目処がたってねぇんだ。無駄遣いはダメだよい」

マルコが鋭い視線を向ければ、サッチは体をクネクネさせながら唇を尖らせる。

「ううーん。マルちゃんったらつれないお人。いいじゃない!たまには外で飲みたいじゃなぁい?」

「究極に気持ちわるいにゃ!!!」

「同感だよい」


結局サッチの押しに負けたマルコとリィリィは夜のミナガルデへと繰り出した。

「あれぇ?酒場がやってねぇ」

「にゃー。おかしいにゃ。いつも酒場は夜まで賑やかなのに」



しかし警戒令のせいか、酒場はどこもやっておらず
ミナガルデは静寂に包まれている。
そしてやっとのことで一件の酒場を見つけた。
それはギルドが経営する酒場だ。

「すんませーん!」

サッチがそう言って酒場に入れば、酒場の店主らしき男が一人で忙しそうに準備をしている。
そしてサッチに気づくと申し訳なさそうに眉を下げた。


「悪いねお客さん。今日は予約がはいってんだ」

「ええーん!そんなぁ!」

「サッチ諦めろい」

「そうだにゃ!」

店先でぎゃあぎゃあと騒ぐサッチに、マルコとリィリィはため息をつく。
その時だった。
マルコはただならぬ気配を感じて、その方向に振り向く。
マルコの視線の先からは、ザッザッという大人数の足音。
それが暗闇の街から聞こえてくる。

「・・・どうしたにゃ?マルコ隊長」

「・・・誰かくるよい」

リィリィは暗闇に目を凝らしマルコが見つめる先を見つめて、ひぃっと小さく悲鳴を上げた。

「どうしたリィリィ?」

「あ、あれは!ギルドナイトにゃ!あの正装・・・間違いないにゃ!」

「ギルドナイト・・・」

マルコは露店商のおっさんが言っていた事を思い出す。

化けもんみたいなハンターが集まってる。

それが本当なら、このただならぬ気配も納得できた。

ギルドナイトの集団は酒場の前まで来るとピタリと止まる。

「にゃーー!!サッチ隊長!!帰るにゃ!!」

「ええー!だってやってる酒場ここしかねぇんだぜ?一杯くらい・・・」

サッチはそこで駄々をこねるのを止めた。
目の前にいるその集団の威圧感に押されてか、リィリィと共に二、三歩後ずさる。

「んで着いてくんだ!!」

「私たちも行くの!!」

「そうだぞ!ババァ!」

「てめぇクソガキ!誰に向かって口聞いてんだ!!」

「いでーーー!!」

「・・・暴力ハバァ」

「エース!てめぇの頭かち割ってやろうか!?」

「や、止めましょうよ!きゃああ!!エースさんの頭がぁあ!!」

マルコ達はギルドナイトの集団の後ろから聞こえてくる
聞き覚えのある声と、名前に目を見開く。

そして

「よい?」

「え?」

「にゃ?」

ギルドナイトの集団を割って登場したのは、マーベルとルピタ達だった。

「ルピターーー!!」

「り、り、リィリィ!!!」

リィリィは大号泣でルピタに抱きついた。

「サッチ!!マルコ!!」

エースも目を輝かせて近寄る。

「エース!!!無事だったかよい・・・うわ!」

「どうしたエース!!頭から大量出血してんぞ!!」

「大丈夫だ!問題ねぇ!」

頭からダラダラと血を流すエースの顔はキラキラと輝いていた。

「サッチ隊長!!マルコ隊長!!うわぁあ!本物だぁあ!」

ルピタはサッチ、マルコと手を取り合って輪になるとくるくる回る。

「おー!奇遇だな!」

マーベルはそう言ってニっと笑った。

「にゃ!マーベルさんはギルドナイトだったのかにゃ!」

「声がでけぇよクソ猫。あ、そうだ!パイナップル!」

マーベルは、回りすぎて若干酔い気味のマルコに視線を移した。

「・・・マルコだよい」

「あ、わりぃなマルコップル!あの虫もうちょっと借りるぞ?」

「・・・わかったよい」

そんな様子を見ていたジェイクとコマチは呆気に取られていた。





≪ |
back

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -