エースとルピタの言葉に、マーベルは腕を組み壁にもたれ掛かる。

「つまり洗脳されていたと?」

「ああ。俺達をみても何の反応も示さなかった。親玉の命令に従う操り人形みてぇになっちまってた」

マーベルは眉間に皺を寄せると、はぁっと短く息を吐く。

「竜操術については、あらかた調べがついている。しかしだな、何故チチカナなんだ?」

「それはチチカナがユダの民だから・・・じゃないかな」

「ユダの民族?・・・チチカナがか?」

マーベルが問えばルピタは俯いたまま首を縦に振った。

「チチカナはユダの民の生き残りだって言ってた。そしてあの笛・・・。これは私の推測だけど、ユダの民の人達はあの笛で竜をあやつってたんじゃないかなって・・・」

「・・・ユダの民の村跡地から出てきた焼け焦げた古文書に竜操術の記述があったのはそういうことだって言いてぇのか?」

「うん。でもチチカナは洗脳されてやってるだけなんだよ!!自ら望んでそんなことをやるような奴じゃない!!」

「そんなこたぁ分かってるよ」

マーベルはそう言って泣きそうなルピタの頭をポンと撫でた。

「他に有力な情報は得たか?あるなら教えてくれ」

マーベルはそう言ってエースに視線を移す。

「そうだな。親玉はバシルと名乗ってたぜ。後気になる事といやぁ・・・あの銀色の集団が死体だったってことぐれぇだ」

エースの返答にマーベルはピクリと眉をあげた。
そしてエースとルピタにその銀色の集団の死体がある場所を聞き出すと
部下へ向かわせる。

「・・・バシル。」

「どうしたのマーベルさん?」

「そのバシルと言う名。聞いたことがある気がしてな」

すると部下の一人が声をあげる。

「隊長!」

「なんだモーガン」

モーガンと呼ばれたその部下は、戸惑いながらも続けた。

「そのバシルというのは、あのバシル・オ・ロンドの事では?」

「・・・まさか。奴は50年前に・・・」

「バシル・オ・ロンド?誰だそれ?」

驚くマーベルにエースが呟く。

「あたしがハンターに成り立ての頃に起こった事件なんだが・・・。50年前。バシルはギルドナイトのある小隊の隊長だった人物だ。しかしとある任務中その小隊ごと行方不明になっている。その後の調べで、バシルは何やら怪しげな呪術や妖術の研究を秘密裏に行っていたらしく、竜操術も研究していたらしい」

「その怪しいおっさんが、俺達が会ったバシルって野郎なのか?」

「それはわからねぇが・・・。捜索の末その小隊と隊長バシルの死体は上がってねぇ。まぁ、あらかたモンスターの餌になっちまったんだろうって事件の数年後には死亡が認定されている」

マーベルは頭をワシワシと掻くと、ギロリと伏せていた瞳をあげた。

「まぁ誰であろうと、あたしの娘に手ェ出した野郎は許さねぇ。」

「マーベルさん・・・。でも」

ルピタが何かをいいかけたその時。
死体の様子を見てくるよう命じられたマーベルの部下が戻ってきた。

「死体は回収したか?」

「はっ!いえ、それがその・・・」

「どうした?」

「死体などはありません・・・でした」

部下はそう言って、困ったようにエースとルピタに視線を移す。

「そんな!私達確かに確認したんですよ!!」

「そうだ!確かに奴等は・・・」

「しかし、我々には確認出来ませんでした」

エースとルピタはあり得ないと言わんばかりに目を見開く。

「死体が動くなんてあり得ねぇだろ」

「やっぱりゾンビだったんですよ!」

「マジかよ!ゾンビとかもっとあり得ねぇだろ!!」

そんな二人を尻目に、マーベルが口を開く。

「まぁいい。とにかく今は奴等を追うことが先決だ。」

マーベルはそう言いながらポーチからあるものを取り出したのだ。
そのものに、エースとルピタあんぐりと口を開く。

「お、おい。それ」

「あ?何だよ」

「マ、マーベルさん。それをどこで?」

二人が指差す先には
この世界には存在しない虫。
そう。電伝虫の姿。
それがマーベルのポーチから出てきたのだ。

「え?あ、そうだそうだ!思い出した!お前のお仲間にあったぞ!エース!」

「はぁあああ!???」

「わりぃな。忙しくてすっかり忘れてた!」

「忘れてた!って!!!」

「この任務が終わり次第ミナガルデで合流することになってたんだ!あはは!あ、この気色悪ぃ虫もお前のお仲間に借りたんだ。パイナップルみてぇな頭した奴に

ケラケラ笑うマーベルに、エースとルピタは目をパチクリさせて顔を見合わせる。

「モビーの皆がっ・・・」

「この世界にいる・・・!!」


して二人の顔にぱぁあっと花が咲くように笑顔が現れた。
そんな二人を他所にマーベルは電伝虫を器用に使いこなし、とあるところへかけた。

「おおおおい!!使いこなしてるよ!この人ぉお!!!」

「すごい!マーベルさん!さすが!マーベルさん!!」


『はい!こちら追跡班』

電伝虫が喋り出す。

「あー。マーベルだ。追跡の方はどうなってる」

『は!こちら順調に進んでおります』

「わかった。引き続きよろしく頼む」

マーベルはそう言って電伝虫を切ると、ニヤリと笑った。

「追跡班?・・・ってことはまさか」

「ああ。あたしら特殊部隊に抜かりはねぇよ」

その言葉に、ギルドはざわめいた。



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