「ここはモガの森っていって、私たちがよく狩りをする場所です。この森の先に、私たちがお世話になっているモガの村があります」
ルピタは歩きながらエースに説明をした。
しかしエースは半分上の空。
ギャウギャウと鳴き声をあげる小さな恐竜の姿をしたモンスター、ジャギィの噛みつき攻撃を、ひょいひょい避けながらルピタは続ける。
「今若干うざいのが、ジャギィっていう小型モンスターです。まぁ、牙とかが剥ぎ取れます」
「そうか。」
エースもひょいひょい避けながら答えた。
「それにしても・・・これからどうしよう」
ルピタは肩を落とす。
「いいじゃねぇか。お前らは帰ってこれたんだ。」
「だってリィリィも置いてきちゃったし、エース隊長の事もあるし、それに」
「ん?それに?」
「オヤジさんやマルコ隊長・・・サッチ隊長、モビーの皆にちゃんとお礼出来てないじゃないですか」
エースはそんなルピタを見つめ、悲しそうに眉を寄せる。
しばらく歩けば、大きな門の先に海の上に浮く島のような村が姿を表した。
「あれが、わたくしたちが今お世話になっている村。モガの村ですわ」
「おお。」
自分がいた世界とはずいぶん文化が違う事に、軽くカルチャーショックを覚えたエースは
短く感嘆の声をあげる。
門をくぐり、長い桟橋を渡ればそこに広がるのは独特の文化が栄えるモガの村。
「あ。ハンターさんだぁ!!!村長さぁーん!」
橋で釣りを楽しんでいた子供達が、嬉しそうに走り出した。
「おお!!ルピタにチチカナ!!生きとったのか!!」
羽織を羽織った浅黒い肌の老人はそう言って潤んだ目を見開いた。
そして二人に近づくと、膝をつく。
「良かった・・・もう諦めとったんじゃ」
「ごめんさない村長さん」
「わたくし達ちょっと訳ありまして、ある方々にお世話になっていたんですの」
村人が一斉にルピタ達に寄ってきた。
そのなかには泣いている者もいる。
「皆心配しておったのだぞ」
村長はそう言って、微笑む。
「して、そちらのハイカラな格好をした方はどちらさんだ?」
村長はそう言ってふかしていたキセルをエースに向ける。
「あっこの人は、私たちを助けてくれた恩人だよ」
「そうか。そうか。ありがとうございます。わが村の英雄達を・・・ありがとう、ありがとう」
村長は涙声で、何度も頭を下げる。
「いっいゃ。俺は何もしてねぇよ」
エースは顔を赤くして、ハットを深々と被った。
「お名前はなんというのですか?」
「俺はポートガス・D・エース。海賊だっ!」
エースがそう言えば、村の人々の顔つきが強張った。
「あわわわわ!!海賊でも、すっごくいい海賊なんだよ?」
「そうですわ。女癖が悪いのがたまに傷ですのよ」
「おい。今さりげなく言わなくていいこと言った奴誰だ」
ルピタ達はなんとかエースをフォローして、事情を離す。
「実はね、エース隊長・・・いや。エースさんは、遭難しちゃって帰れなくなっちゃったの。だからしばらくこの村で生活させて欲しいんだ」
ルピタは一生懸命村長に交渉する。
「海賊なんじゃろ?お前さん達を救ってくれた恩人の彼を信じたいが・・」
「エースさんはとってもいいかたですわ。村を襲う野蛮な海賊とは違いますのよ。それにとってもお強いのですよ」
「なんだ?この村襲撃されんのか?」
エースがルピタに視線を移す。
「まぁ。たまぁにですけど、海賊が来て野蛮なことしてきますね。私たちがいるときは、追い返せますけどね」
「わかった。じゃあ俺がこの村にいる間、その辺の海賊共に手出しさせねぇ。これでどうだ?村長」
エースはテンガロンハットの押さえて笑う。
その顔に嘘はないと判断したのか、村長はそれを了承した。