その夜。
白ひげ海賊団の宴は早めの幕を閉じた。
馴れない異世界で皆疲れたのだろう。
皆甲板で酔いつぶれて眠っていた。
リィリィもその一人だった。
くるりと丸まり、くうくうと寝息を立てる。

ロックラックの街もその賑やかさが静まりかけたその時だった。
ドォンという爆発が白ひげ海賊団と街を起こしたのだ。

「にゃあああ!!?」

リィリィが全身の毛を逆立たせ飛び起きる。

「な、なんだよ!!」

「敵襲か!?」

「いや!見ろ!街が燃えてんぞ!!」

甲板にいたクルー達は次々と起き上がり、炎に包まれる街を見つめている。

「何事だよい!」

「おお!マルコ」

自室にいたマルコも甲板へ飛び出して来た。

「いきなり爆発音がして、街が燃え始めたんですよ!」

モクモクと上がる煙と、火の粉。
そして人々の悲鳴が辺りに広がっている。

「グラララ!ゆっくり寝てもらんねぇな!」

「オヤジ!」

白ひげはそう言って炎に包まれる街を見つめている。

「にゃー!!ロックラックの街がっ!!大変にゃ!!」

リィリィの瞳には燃えるロックラックが映し出される。

「ん?」

マルコはふっと上空を見上げた。
そこにはロックラックを旋回する何かの姿。

「なんだあれ鳥か?」

「いや、ちげぇよい!サッチお前も見たことあるだろい!!」

「・・・げ!あれ!!」

二人の目に映ったのは、見覚えのあるものだった。
赤黒い鱗を纏い、口から火を吹く
大空を舞う王者の姿。

「リオレウスにゃ!リオレウスが街を襲ってるにゃ!」

「・・・」

マルコは無言で青い炎を纏い飛び上がる。

「マルコ!?」

「にゃにゃ!!?」

リオレウスは無数の火球ブレスを街に注いでいた。
そこへマルコが不死鳥の姿で突っ込んでいく。
そして街上空を覆うようにその羽を広げたのだ。

リオレウスは見たこともない鳥に一瞬怯むが、すぐに威嚇を始める。

「マルコの奴やるじゃあねぇか!グラララ!おいバカ息子共行くぞ!!俺たちゃあ、人の笑顔を愛する"大道芸人"一家だぁ!!」

「「「おおおお!!!!」」」

雄叫びをあげ、白ひげに続くクルー達は甲板から勢いよく飛び出していく。

「よっしゃあ!俺たちも行くぞ!リィリィ!」

「了解にゃ!!アイルー戦車!出撃ーーー!!にゃ!」






「なんだありゃ!?」

上空を見上げたマーベルが叫んだ。

「どうしました!!マーベルさん!」

「い、いや。見たことねぇ鳥がリオレウスと戦ってやがる」

「ほ、ほんとうだ!!こりゃ運がいい!リオレウスが足止めされている内に、こっちをなんとかしましょう!市街地に、二体のナルガクルガが確認されたそうです!いきましょう!!」

「・・・ああ!!」

マーベルはそう言って、傍らにいたハンターの後を追った。
市街地は二体のナルガクルガによって襲われていた。

一体は、黒い艶やかな体毛をもつナルガクルガ。
もう一体は、緑の体毛をもつナルガクルガ亜種だ。

迅竜とも呼ばれるナルガは
どちらも俊敏な動きを特徴とし、その速さはあのティガレックスをもしのぐ。

長い尾も特徴の一つで、それを使った攻撃も仕掛けてくるのだ。


「確認出来るのはその二体だけか!」

「今の所は!・・・!?」

市街地へ急ぐマーベルともう一人のハンターの前に、銀色の集団が立ちふさがる。

「な、なんだ!君たちは!ハンターならギルドに指定された持ち場へ戻るん・・・」

そう言って近づくハンターを銀色の集団の一人がランスで貫いた。

「がっ・・・あ!!」

「おい!!」

駆け寄ろうとするマーベルに、ビュッとランスの矛先が突きつけられる。

「・・・なんの真似だよ」

「マーベル・スティンガーだな。共に来るのだ。私達はお前を高く評価している」

「ほぉ。そうかい。そりゃ嬉しいねぇ!・・・じゃあ・・・」

マーベルはそう言ってニヤリと笑うと、大剣を素早く抜いた。
そして突き付けられたランスを弾く。
衝撃でよろめいたその人物に向かって、大剣を投げたのだ。
まるで投げナイフのように飛ぶ巨大な剣は、その人物の胴にぐさりと刺さる。

まるで人形のように声すら上げず、その人物はドサリと倒れた。マーベルはそれに近づき突き刺さった大剣を抜くと、ギロリと目の前の集団を睨み付ける。

「じゃあ、あたしの恐ろしさも知ってるって事だよな?」

銀色の集団はピクリとも反応せず、ブツブツと何かを呟いて
マーベルに向かい一斉にランスを抜いた。

その時だったドゴンッと言う音がしたと思えばその集団が吹き飛ばされた。
正確に言えば、家屋をぶち破って飛んできたナルガクルガに吹き飛ばされたのだが・・・。

「オヤジィイ!!加減しねぇと!オヤジの能力で街が壊滅しちまうよー!!」

「グラララ!悪いなぁ!」

ザッザッと複数の足音がマーベルの目の前に横たわるナルガクルガへ近づいてくる。
そしてマーベルの目の前に現れたのは巨体と大きな白ひげをもつ男。
そしてリーゼントに、アイルー。

「でかぁああ!!!」

マーベルが最初に叫んだ言葉はそれだった。

「あれ?昼間のおねーさん!」

「マーベルさんにゃ!どうしたにゃ!?顎が外れてるにゃ!!」

「ん?あんたが昼間の情報提供者かぁ!!グラララ!奇遇だな!!」

白ひげは笑いながらめまい状態のナルガの尻尾を掴むと、

「ふん!」

と言って遠くへ投げ飛ばした。

「おいおいおい!!!!」

マーベルはさらに驚きが止まらない。




上空でリオレウスと空中戦を繰り広げるマルコ。
マルコは攻撃を的確に避けながら、リオレウスにダメージを与えていく。
しかし、マルコの素手での攻撃は
ダメージが蓄積するのに時間がかかった。

「くっそ!!きりがねぇよい!」

その時だった。ふっと、マルコの視界に映るなにか。
それは金色と銀色をしていた。
遠くでこちらの様子を伺うように浮遊する。
それが飛竜だと気づくのに時間はかからなかった。
さらにその飛竜に乗る人のような影。


次の瞬間だった。
聞き覚えのある笛の音。

「この音・・・。」

マルコはその音にハッとする。
その音は地上にも鳴り響いた。

「おいおい!リィリィ!この音」

「にゃにゃ!」

「狩猟笛の音だな。」

マーベル、リィリィ、白ひげ、サッチが上空を見上げる。
上空でマルコと交戦していたリオレウスはキョロキョロと辺りを見回したかと思うと
そのままバサバサと羽を羽ばたかせ去っていったのだ。

「リオレウスが、去っていきやがる」

マーベルが呟いたのと同時に、そこへあの青い鳥が降下してくる。
それはふわりと人の姿に変わった。

「マールコォ!!」

「マルコ隊長ー」

「グララ!ご苦労だったなぁ」

マーベルは驚きが隠せない。
何故なら見たこともない鳥が降りてきたと思えば、それが昼間出会ったパイナップル頭に変化したからだ。

エースは体が火に変化し、パイナップルは鳥になる。
そして、この大男はナルガを振り回してぶっ飛ばすほどの怪力を持っている。
マーベルはつくづくこの不思議人間達に驚かされていた。

「なるほどな。エースのお仲間って言うのも頷ける」

マーベルはぼそりと呟いて、先程一緒にいたハンターの亡骸を抱えた。






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