酒場にはルピタやチチカナのような防具を纏い、見慣れない武器を携えた者が大勢いた。
マルコとサッチはそんな風景に、
ああ。本当にここは違う世界なんだと
再認識した。
元々この世界の住人であるリィリィのおかげで
混乱せずにすんでいるが
これが単身で飛ばされていたらどうなっていただろう。
そんなことまで思ってしまう。

「にゃー。誰から声をかけてみようかにゃ?」

「え?マジで声かけんの?ちょ。マジで?」

サッチはハンター達が醸し出す独特なオーラに困惑気味だ。

「まぁ一人一人に聞いてみるしかなさそうだよい」

「そうだにゃー・・・ん?・・んんん!?」

リィリィは目を凝らしてある人物を見つめていた。
その人物は奥のカウンター席で、一人酒を豪快に煽る女だ。

「な、なんだ?知り合いか?」

「・・・あれはっマーベルさんにゃ!!!」

「「マーベルさん?」」

リィリィは即様その女に近寄っていく。
マルコとサッチはそのあとを追った。

「マーベルさーーん!!!」

「あ?」

マーベルと呼ばれる女はそう言って振り返る。
そしてジっとリィリィを見つめた。

「マーベルさん!お久しぶりですにゃあ!!」

「・・・・なんだ?誰だお前?」

「にゃにゃーー!?!?お忘れですかにゃ!!ルピタのオトモ!リィリィですにゃ!!」

「リィリィ?・・・ああ!思い出した!」

「ほんとですかにゃ!?」

「ああ。ルピタが拾ってきたっていう、クソ役に立たねぇ弱小オトモのリィリィ」

「酷すぎますにゃ!!!!」

「んで?なんでお前一人でこんな所ほっつきあるってんだ?使えねぇから遂に解雇されたか?」

「ますます毒舌に拍車がかかってますにゃ!!違いますにゃー・・・実は」

リィリィはそう言って後ろのマルコとサッチに視線を移す。
マーベルもそれを追うように視線を向けた。

「は、はじめましてー!いやぁ!綺麗なおねーさんですね!」

「いきなり声をかけてすまないよい」

ヘコヘコと頭を下げるサッチと
至って冷静なマルコ。
そんな二人を鋭い目付きで観察したマーベルが
口を開く。

「誰だ?お前ら」

「マ、マーベルさん!実はですにゃ!ボクとルピタとチチカナは、この人たちにお世話になってたにゃー!でもわけあってはぐれてしまったにゃ!」

「ふぅん。そうかい」

マーベルはそう言って一口酒を含むと、リィリィとサッチ、マルコを交互に見つめる。
そしてニヤリと笑った。

「娘達が世話んなったみてぇだな。ありがとう」

「「むすめ!!?」」

マルコとサッチの発言が重なる。

「そんなに驚くことか?あたしは二人の育ての親みてぇな存在だよ。どっちも可愛いあたしの娘さ。・・・ん?ってことはお前らあのエースのお仲間か?」

「よい!?」

「エース隊長を知ってるのかにゃ!!?」

「あ、これっ!写真なんすけど・・・おねーさんが言うエースって野郎はこんな奴でしたか!?」

サッチが慌ててエースの手配書をマーベルに見せた。
するとマーベルは、そうそう!と頷く。

「ルピタの奴から聞いたんだが、恩人だって言っててな!でも仲間とはぐれて云々とも言ってたからよ!そうかい。あんたらこの負けず嫌いボウズのお仲間か!」

「ルピタとチチカナにもあったのかにゃ!?」

「ああ。モガの村でな!その時エースを紹介されたんだ!その後このロックラックまでは共に来たんだが、奴らユクモ村に用があるって、そっちに向かったよ」

「ゆくもむら?」

「ロックラックから遥か東にある村だにゃ!」

「じゃああいつらはそのゆくもむらって所にいるんだな?」

「多分な。でも結構前のことだぞ?もしかしたら目的を終えてモガの村に帰還してるかもしれねぇしな。あいつらの拠点はモガの村だ。エースもしばらくそこへ世話になると言っていたし・・・。会いてぇなら可能性はそこが大だ。」

マーベルの言葉に、マルコとサッチとリィリィは互いの顔を見合わせた。

「じゃあよ、様子を見てきてやる。今ハンター家業の傍ら交易船に乗せてもらってるんだ。今回はあたしの私情でそのままロックラックに残ってるが、明日辺りにまた交易船が一巡してロックラックに戻ってくるはずだ。そしたら次の行き先はモガの村。あいつらがいたらあんたらに伝書を出そう。ただ伝書だから数日かかっちまうが・・・」

マーベルの提案にマルコはあることを思いついた。

「おいサッチ。今電伝虫もってるかい?」

「え?持ってるけどよ・・・。どうすんだ?」

サッチは困惑気味に小型の電伝虫を取り出す。
するとマルコはそれをマーベルに差し出した。
マーベルは見たことないその虫に顔をひくつかせる。

「な、なんだよ。これ?」

「こいつは、電伝虫っていう・・・まぁ虫だよい。伝書よりこっちを使ってくれねぇかい?その方が早く情報を掴むことが出来るんでねい」

マーベルはそう言われたものの、それを受けとることが出来ない。
何故なら得体が知れないからだ。
マルコは、試しにそこからモビーの電伝虫へとかけてみる。

『はい!こちらモビー!情報は得られましたか!?』

「うぉおおお!!?」

さすがのマーベルも後ずさる。

「き、気持ちわりぃ虫だな!なんだよこれ!」

「まぁ。こういう機能が備わった虫だい。・・・あー。こちらマルコ。情報提供者が現れたよい。詳しい事は戻ってから話すとオヤジに伝えてくれい」

『了解しました!』

そしてプツリと切れる電伝虫。

マーベルは目が点だ。


「こんな虫見たことも聞いたこともねぇぞ?どこで仕入れてくんだよ?」

「それは企業秘密だよい。使い方は教える。頼めるかい?」

「わ、わかった。それじゃあモガの村に着き次第こいつで連絡する。」

マルコはマーベルに電伝虫の使い方を一通り教える。そして、酒場を後にした。


「よしっ!この世界に確実にあいつらがいる!」

「後はマーベルさんの情報を待つだけにゃ!嬉しいにゃ!」

「リィリィ。モガの村とやらには、ここからどれくらいかかるんだい?」

「にゃー。天候や海の状態も考慮して多分三日はかかるにゃ!」

「・・・3日か。しょうがないよい。ビブルカードだけを頼りに動き回るよりこっちのほうがいいだろい」

「そうだな!リィリィ。ロックラックにはそれぐらい停泊出来るんだろ?」

「バッチリにゃ!警備隊には話をつけてあるし問題ないにゃ!ボクを見くびってもらっちゃあ困るにゃ!!」

三人は思わぬ収穫に、意気揚々と船へ戻る。


「グラララ!そうか!収穫大だったなぁ!」

「ああ。話によればあいつらがその村を拠点にしてるそうだい。だから間違いないとは思うよい」


モビーに戻った三人は白ひげに事の説明をする。
持ち帰った有力情報に、船内からは歓声があがった。


「ほんとは、モガの村まで案内したいところですのにゃー。でもさすがのボクも、航路まではわからないにゃ。ごめんなさいですにゃ。」

「あやまるこたぁねぇ!!充分だ!」

「だよなー!リィリィの知ったかぶりのせいで、知らねぇ海で迷子なんてごめんだぜ!」

「フランスパンに言われたくないにゃ!!!」

「おぅおぅ。怒るな。マタタビやるから」

「にゃふん!」

そんなサッチとリィリィの掛け合いに、クルー達の顔にも笑顔が戻る。


「グララララララ!よし!宴だ!!この異世界に乾杯しようじゃあねぇか!!」

白ひげはそう言って笑う。
この豪快さは、どこの世界でも変わらないようだ。
そんな白ひげの豪快さに、クルー達も沸き立った。


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