極寒の雪山。
そこにルピタはいた。
降りしきる雪が次第に強くなるなか、ざくざくと雪を踏みしめ彼女はある場所を目指していた。

「こりゃヤバイなー。早く戻んなきゃ吹雪になる」

足早に雪山を登れば、開けた場所にたどり着いた。
白く霞む視界の中に
ポツリと存在する木を組み合わせた十字架。

ルピタはポスンと膝をつくと、にんまりと笑う。

「久しぶり。父さん」


雪が休むことなく降り注ぐ中。
ルピタは、その十字架に今までのことを語りかける。

「それでね、父さん。エース隊長がね?」

十字架が何を言うわけでもく、ただ彼女の語りかける声だけが辺りに響いた。

「私ね。大事な友達を助けにドンドルマへ行くの。だから、見守ってて。必ず助けるから。」

ルピタは深く十字架に祈りを捧げると立ち上がった。

「父さん。また来るね?その時は美味しいお酒持ってくるよ」

ルピタはそう言ってニコリと微笑むと、十字架に背を向けた。
そんな彼女の視界にフっとはいるポポというマンモスのようなモンスターの親子。

「ポポの親子だー」

微笑ましいその様子を目を細めて眺めているその時だった。
凄まじい咆哮がルピタの耳を通り抜けていく。
その咆哮に、彼女は聞き覚えがあった。

ドスドスと雪の上を移動する足音。
それはピタリと止まり、次の瞬間ドスンとルピタの前へ落下する。
その者の前足は先程のポポの子どもを捕らえていた。
ポポの子どもは、バタバタと抵抗するが
それも虚しく、しばらくして力尽きる。

原始的な恐竜の面影を残し、黄色の外殻に青の縞模様という特徴的な体を持つ。
四つん這いで移動する飛竜。ティガレックスだ。

その鋭い牙で、ポポの子どもの肉を噛みきり
ムシャムシャと食べ始めたティガレックス。
そして、その血だらけの顔をルピタに向けたのだった。

ティガレックス顔に残る一筋の傷。

それを見てルピタは確信する。
このティガレックスは、あの日父を殺したこの山の主であることを。

ルピタは背中に携えた大剣を抜く。

「やっと会えたね。父さんの仇。」

そう言って雪を蹴った。








「ったく!あいつはどこほっつきあるってんだ!!」

「どこいっちまったんだろーな!」

「家には戻っていませんでしたね・・・」

食堂でルピタを待っていた三人
しかし、一時間しても彼女は来なかった。
そのため、食堂を出て捜索を開始するも
村の何処にも彼女の姿はなかった。

「どうしたんだい?」

「あァ!?なんだあんたか」

そこへ現れたのはアーティアだった。
そんなアーティアに振り向いたエースは、大分機嫌が悪そうだ。

「どうしたんだい?!エース君!そんな怖い顔して!」

「わりぃな。生まれつきだ。それよりあんたルピタを知らねぇか?」

「君たちと一緒じゃなかったのかい?」

「一緒じゃねぇから探してんだけど」

アーティアはううーんと唸る。

「ルピタの奴!ホント何処にいっちまったんだ?」

ジェイクがそう言った時だった。
微かに聞こえる何かの咆哮。
それは雪山から聞こえてくるもので、四人を含む村民全員が雪山に視線を移す。

「な、なんだ今の?」

「あれは雪山に住むティガレックスの咆哮だ。」

アーティアの言葉にエースはハッとし。
そして

「おいあんた!雪山に詳しいか!?」

そう言ってアーティアに視線を移す。

「え?あぁ。まぁ」

「じゃあ今から雪山を案内してくれ!」

エースはそう言ってズンズン歩みだす。

「まっ待ってくれ!今雪山に入るのは危険だ!これから吹雪になる!それに今のを聞いたろう!?ティガレックスが近くまで降りてきている可能性が高い!」

「それがなんだよ!!・・あいつきっと雪山にいやがるんだ。親父の墓参りしに・・・!」

アーティアが顔色を変える。
そしてエースに続いた。

「ジェイク君!コマチちゃん!君たちは村で待っていてくれ!もしかしたらティガレックスが村に降りて来るかもしれない!その時に備えておいてくれ!」

アーティアの言葉に二人が頷く。

エースとアーティアはオババに事の説明をすると、急いで雪山に向かったのだ。


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