「あいつ・・・どこいきやがったんだ?」
エースはルピタを探しに出掛けた。
しかし、村の何処にも彼女の姿はなかった。
探していないのは村の墓地。
エースはそこへ入っていく。
「ルピタ・・・?」
ルピタはそこにいた。
1つの墓石の前にしゃがみこんで、俯いた顔をフッと上げた。
「あ、エース隊長!」
「・・・お前の父ちゃんの墓か?」
「あ、これはお母さんのお墓です。お母さんは私が生まれてすぐに死んじゃったんで・・・顔も覚えてないんですけどね」
「・・・そうなのか」
「だから私が知ってるお母さんはマーベルさんしかいないんですよ。写真の一枚でも残ってれば良かったんですけどね・・・」
そう言ってふふっと笑う。
そんなルピタの横顔を見つめ、エースは墓石に視線を戻した。
「父さんの墓はここにはないんですよ」
「え?」
「父さんの墓は彼処なんです」
ルピタが指差したのは、村の近くにある大きな雪山だった。
白く霞む中そびえ立つそれに、エースも視線を移す。
「あの山で父さんは死んだんです。あれは私が6才の時。ハンターだった父さんは山へ採掘に向かいました。ハンターに憧れてた私は父さんの言いつけを守らずその後をこっそりついてったんです。雪山の天気は変わりやすい。晴れてたはずが、猛吹雪になっちゃって・・・」
そう言って雪山を見つめるルピタの話を、エースはなにも言わずに聞き続ける。
「視界は最悪。右も左も分からないくらいになってしまったとき、奴は現れました。あの山の主であるティガレックスです。もう終わりだ、って思いました。でもその時。父さんが来てくれたんです。でも・・ティガレックスの標的はあくまで私。そんな私を庇って、父さんはその爪に倒れたんです。」
ルピタは目を伏せると、エースに向かってニコリと微笑んだ。
「そのあとはよく覚えてない。気づいたらマーベルさんが私を看病してくれてました。そして渡されたんです。この大剣を・・・。私を助けてくれた後、マーベルさんは山に戻ったそうで・・・でも、父さんの遺体は食い散らかされてて村に帰れるような状態じゃなかったそうです。だからあの山の見晴らしが良い場所に、マーベルさんが埋葬してくれました。」
ルピタはそう言って自嘲気味に笑うと、母の墓石にまた来るね。と告げる。
「さっ!エース隊長戻りましょ!」
「お、おぅ。」
二人は墓地を後にする。
「エース隊長。ご飯は食べたんですか?」
「いや。まだ食ってねぇ。ジェイク達は先に食堂に向かったぞ」
「そうっすかぁ。んじゃ食べてきてください!私はまだ行くところがあるから!食堂で会いましょう!」
ルピタはそう言って踵を翻す。
そんな彼女の背中を、エースは黙って見つめていた。