しゅんとするルピタの肩を、エースが叩く。
「エース隊長・・・」
「しゃあねぇよ。他を当たろう」
そんな二人に近づく影があった。
「あたい知ってるよ!」
その影の正体は一人の女ハンターだった。
「ホントですか!?」
「ああ!良かったら向こうで話そう!
女ハンターはそう言って酒場の方を指差した。
酒場のテーブルへ腰かければ、ルピタは早速あの集団の事を聞き始める。
「ちょっと待ちな嬢ちゃん!その前に出すもんがあんだろ?」
「え?」
「他のハンターが仕入れた情報を聞きたいなら、それなりの対価を払うのがハンターの常識。いくらだせんだい?」
「あーそっか!そうでしたよね!すいません今手持ちがあんまなくて・・・ざっと2千ぐらいしか出せないんです」
「ふぅん。じゃあその隣の男前を貸してくれんなら、全部話してやるよ?」
女ハンターはそう言ってエースに視線を向ける。
「ホントですか!?じゃあエース隊長と引き換えに・・・」
「おいてめぇ。俺を売るな」
「あはは。冗談ですよぅ!ハンタージョークです」
「なんだよ。ハンタージョークって。バカなのか?」
そんな二人の掛け合いに女ハンターは吹き出した。
「あはは!あんたら面白いねぇ!いいよ。2千であたいの知ってる全てを話そう。あたいはミスティってんだ」
「私はルピタです!」
「俺はエースだ。」
「ふふっよろしく」
ミスティはそう言って笑うと、早速情報を提供してくれる。
「あたいはこのミナガルデに来てから1ヶ月くらいゲストハウスに世話になってんだけどよ。ちょうどあたいの隣の部屋に変な集団が泊まり込むようになってさ!多分あんたがさっきカウンターのねぇちゃんに聞いてた集団のことだろうと思うんだけど」
「銀色の集団じゃなかったですか!?」
「そうそう!そいつらだよ!んでさ、ゲストハウスの壁は薄っぺらだから、会話が時たま聞こえてくるんだ。女帝がなんちゃらとか、りゅうそ?なんとかって話をしてたんだ。そこは詳しく聞けなかったんだけどね」
「女帝・・・確かそんなこと言ってたよな」
女帝と言う言葉にエースがピクリと反応して、ルピタに視線を移す。
彼女はそれにコクリと頷いた。
「気味悪い集団だったな。特にリーダー格みたいな仮面の男。この辺じゃあ見ない防具を身につけてたっけ!」
「仮面の男?それはどんな人だったんですか!?」
「真っ黒い防具の男だったよ。見てるとこう・・・吸い込まれそうになるくらい漆黒の防具。なんの素材で出来てるかまではわかんないけどさ!」
ルピタはううん。と唸った。
自分が渓流で出会った集団の中にそんな男はいなかったはずだ。
となれば、あの集団が去り際に放った
あのお方。
それが仮面の男。ということになる。
「それでそのシルバー集団。仮面の男残して数日くらい居なくなったんだよ。んで帰ってきたと思えば、そそくさといなくなっちまってた。って訳さ」
ミスティは話終えると葉巻を取り出して火をつけた。
モハッと煙を吐くと、頬杖をつく。
「あたいが知ってるのはここまで。」
「なぁ。そいつら次に何処へ向かうとか言ってなかったか?」
「あー。わかんないねぇ。面白半分に聞き耳は立ててたんだけどさ!悪いね」
エースとルピタは顔を見合わせた。
ミスティに金を支払い、酒場を後にした二人。
エースの隣でルピタは険しい表情を覗かせる。
「仮面の男。それがチチカナ誘拐の首謀者で間違いなさそうですね」
「ああ。問題はそいつらが次に何処へ向かったか・・・。だな」
「有力な情報は手にいれたけど・・・肝心な情報が入りませんでしたね」
しゅんと肩を落とすルピタの肩に、エースが手を触れようとした瞬間だった。