チチカナは唇を噛み締めた。
そこから溢れた真っ赤な血が顎を伝う。
「私達はここに新たな竜操騎兵団を設立する。お前はその女帝として名を馳せることになるだろう!!そしてそれは、人間どもに龍の恐ろしさを再び植え付ける第二次竜大戦の幕開けとなるのだ!!」
竜大戦。
それは遥か昔。
古代文明すらも破滅に追いやった、龍と人間が起こした大戦だ。
チチカナは瞳を揺らす。
そして再び脳裏に浮かび上がるのは
幼き日の記憶だった。
『おかあさま。どうしてわたくしたちは森のおくでくらさなければならないのですか?』
『チチカナ。それは世界への償いのためです』
『つぐない?』
『昔。我が一族の先祖は龍を操り、人間と戦争を起こしてしまいました。それは龍に敬意を忘れた人間への報復だったそうです。しかし、どんな理由であれ戦争は起こしてはならない。だから我が一族の生き残りはこうして秘術を二度と外へ出さぬようこうして森の奥で守り続ける義務があるのですよ。それが償いなのです』
『んー?よくわかりませんわ』
『ウフフ。チチカナも大人になればわかるときがきますわよ』
チチカナは震える唇を開いた。
「戦争は二度と起きてはならないのです!!!そのために我が一族の秘術を使うなど許されません!!!」
「今ここで"竜操術"は復活する。お前の力を持ってして、世界はまた破滅へと歩む」
「そんなことはさせません!!ならわたくしはここで舌を噛みきるまでです!!」
そう言ったチチカナの口に、布が詰め込まれた。
「ん!!ぐ!」
「これは洗脳に時間がかかりそうだ。自ら命を絶たぬよう見張っておくのだぞ」
「はっ!!かしこまりました!」
涙を溜めたチチカナの瞳に揺れるのは、仮面の男の後ろ姿だった
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