村に戻った四人は、温泉へむかう前にギルドへ赴いた。
「ひょっひょっひょ!久しぶりだねぇ。ジェイク!おやま!ルピタとチチカナまでいるじゃないか!」
温泉に隣接したギルドのカウンターには、小さなオッサン。
オッサンは瓢箪に入った酒をぐびくび煽って、うぃっくと喉を鳴らす。
「ギルドマネージャー!お久しぶりです!」
「久しぶりだねー!相変わらず酔っぱらってんだ」
「ウフフ。お酒はあまりよろしくありませんことよ?」
ジェイクはそう言って一礼する。
う。この小さなオッサンは
そのギルドを仕切るギルドマネージャーなのだ。
「随分ハンターらしくなったじゃねぇの。ひょっひょ!」
「あはは!そうかな?」
「モガの村でも、頑張ってるらしいし。これからも頑張ってちょうだいよ!」
ギルドマネージャーはそう言って奇妙な笑い声をあげる。
「ん?そちらの方は?」
ギルドマネージャーが、酔っ払った目をエースに向ける。
「あ、初めまして!ポートガス・D ・エースといいます!」
「ひょっひょ!これまた珍しい名だねぇ。んんー。チミを見てるとこの子の兄さん思い出すよ」
ギルドマネージャーはそう言ってジェイクに視線を移す。
「兄さんに挨拶はしてきたのかい?」
「いえ、まだ」
「そいじゃあいってらしゃいな。」
ジェイクは頭を下げるとギルドを後にした。
そんなジェイクの後をエースは追う。
村の奥にある墓地には沢山の魂が眠る。
ジェイクは一つの墓石の前で止まると、腰を降ろした。
先程花屋で買った花を墓石にそなえて目を伏せる。
「これがお前の兄貴の・・・」
エースの言葉にジェイクはコクリと頷く。
「兄貴は、ユクモの専属ハンターだったんだ。俺が死んだらこの村に埋葬してほしいって言われてて・・・。じぃちゃんは反対してたんだけどな!やっぱハンターとして専属になった村に埋葬してほしかったんだと思う」
「わからなくもねぇな」
「そうか?」
「あぁ。もし俺が死んだら、海賊として海で眠りたい。まぁ変な理想だよな。」
ジェイクはシシッと笑って立ち上がる。
「きっと兄貴もそんな感じだったのかな?ハンターとして自分が初めて専属になった場所で・・・。俺さ、まだ実感がないんだ」
「実感?」
「あぁ。戻ってきた兄貴は傷だらけだったって言ったろ?でもさ、顔は驚く位綺麗で、今にも起きそうな位安らかだったんだ。」
ざぁっと吹いた風に墓石にそなえられた花が揺れる。
「あんとき、俺はまだガキだったから・・・寝てるだけなんじゃないかって、起き上がってまたいつもみたいに笑ってくれるんじゃないかって思ってた。今でも時々思うんだ。兄貴はどっかで生きてんじゃねぇかなってさ。バカだよなー俺。」
そう言って笑うジェイクに、エースは眉を寄せた。
そこでエースは幼い頃の自分を思い出す。
鬼の子とよばれ、蔑まれてきた自分に
兄弟ができた。
盃を交わし、森を駆け回り、共に生きてきた。
そして、もう一人の兄弟であるサボの死を目の当たりにして
弟に俺は死なないと約束した。
弱っちくて、泣き虫で、そのくせ負けず嫌いで、変にしつこくて、
でも、笑うときは満面の笑みで笑う。
俺が死んだら、ルフィはこんなに悲しい笑顔で笑うのだろうか?
「わりぃ!行こうぜエース!」
ジェイクはそう言って墓地を後にする、その背中をしばらく見つめたエースは
チラリとジェイクの兄の墓石に視線を移した。
テンガロンハットを取り墓石に深く一礼すると、ジェイクの後を追う。
「よーし!温泉入るぞーー!!」
ジェイクは意気揚々と防具を外した。
「あ、エース。水が苦手なんだよな?温泉はへーきか?」
「ああ。海水じゃなきゃな。シャワーとか雨は平気だからよ。多分温泉も大丈夫だと思う」
「そっか!ならよかった!ここの温泉は効能が半端なく凄くてよー!軽い傷なら綺麗に治るんだ」
ジェイクはそう言ってタオルを巻くと浴場へと足を踏み入れる。
エースもタオルを巻きその後を追った。