「ボクはいったニャ。もう誰にも雇われない。旦那さんを喪う悲しみをもう味わいたくない!ってにゃ。そしたらルピタは」
そこまで言ってリィリィはうわぁあと泣き出した。
「ルピタは絶対に死なないと約束したニャ!ボクを残して消えないって!!必ずっ帰って来るって!!」
リィリィの脳裏に
まだ幼い影を残していた
初心者ハンターだった頃のルピタの笑顔が浮かび上がる。
『大丈夫。私は死なないよ?』
「ボクは!!」
『君を残して消えたりしない』
「約束したんにゃ!!」
『絶対に帰ってくる。』
「ルピタとっ・・・」
『約束ね?』
「約束したんにゃぁああ!!」
ボロボロと涙を流し、号泣するリィリィに
サッチはついに堪えていた涙腺を崩壊させる。
「リィリィ!落ち着け!あいつらは絶対っ・・・絶対生きてる!!」
「約束したにゃ・・・っひっ・ひっぐ・・」
「あいつらは生きてるよい」
そこへやってきたマルコに、二人は顔をあげた。
マルコは小さな白い紙切れを持って海を見つめている。
「っ・・ずずっ!マルコたいちょ・・」
リィリィはその潤んだ瞳をマルコに向けた。
「マルコ・・・。ずずっ。そりゃあ・・」
「あぁ。エースのビブルカードだよい。」
マルコはそう言ってそれを見つめる。
「・・・ビブルカード?なんニャそれは?」
「ビブルカードってのは、別名 命の紙とも言われるもんだよい。この紙はエースの命を表していると思ってくれい。この紙が小さくなっていれば、その者が死にかけている事を表す。全て燃え尽きればその者の死を表すんだよい。そしてその者の位置をも特定可能だい」
「ニャルほど。つまりそれは、エース隊長が生きている証拠かにゃ!?」
「ああ。その通りだ。」
「じゃ、じゃあよ!!エースが生きてるっ事は、ルピタとチチカナちゃんも・・・」
「あぁ。生きている可能性が高いよい」
マルコの言葉に、サッチとリィリィは顔を見合わせ互いにとびきりの笑顔を見せた。
「3人はどこにいるんだ!!?ビブルカードはどこを指してる!?」
サッチがマルコに詰め寄れば、マルコは瞳を伏せた。
「それがおかしな事に、ビブルカードはどの方角も指していないんだよい。」
「え?」
「そりゃあどういう事だ!?」
マルコは二人に視線を向けると口を開く。
「これはあくまで俺の仮説だかねい・・・あいつらはこの世界に居ない気がするんだよい。」
「にゃ?」
「何言ってんだマルコ?脳みそまでパイナップルになっちまったのか!?」
「喧嘩うってるのかい?俺が思うには、この世界にいるはずのない怪物がルピタ達の世界からやってきた。ということは、そこには次元の歪みがあったと思うんだよい」
マルコがそう言えばサッチはなるほど!と手を叩く。
「ってこたぁ、3人は・・・その次元の歪みに飲み込まれて」
「そうだい。あいつらは今別の世界にいるんじゃねぇかと思うんだよい。次元の歪みによって繋がったルピタ達の世界に・・・」
ザザンと海が鳴く。
それはあくまでマルコが立てた仮説だった。
しかし、
それは希望へと繋がる仮説。
マルコの手元で、エースのビブルカードが
潮風に揺れた。
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