「せせせせせ船長ぉおおお!!!あいつですよ!!全身火だるまになっても平気な妖術使いでふふ!!」
男は相当焦っているようで、噛んでいた。
そう。その男は先日モガの村を襲い、エースにコテンパンにされたあの海賊だったのだ。
「あぁ?!お前が子分を可愛がってくれたヘンテコ野郎か?おもしれぇ!相手してやる!」
「せせせせせ船長!!止めといた方がいいっすよぉおお!!」
「おーおー。まだ懲りてなかったのかよ」
エースは男を見つめてケタケタ笑った。
「い、いえいえいえ!!滅相もございません!!船長!やめときましょ!?こいつはやば・・・」
そこで鳴り響く銃声。
その弾丸はその男の頭をぶち抜いたのだ。
それを放ったのは船長自身。
これにはエースも目を見開いて驚いた。
ルピタ達も顔を歪める。
ザバンと撃たれた男が海へ落下する。
「・・・てめぇ。仲間じゃねぇのかよ?」
「仲間?仲良しごっこしてんじゃねーんだ。逆らうやつは容赦なく殺す。怖じ気づくやつも同様だ。そんな弱ぇ駒はこの船にはいらん!!」
「・・・」
エースは無言で炎を纏った。
それにマーベルやクルー達は目を最大限に見開く。
「こいよ!妖術使い!!」
「てめぇみてぇな人間が、海賊の頭名乗ってんじゃねぇえええええ!!!」
ドォオンという爆発音と共に
エースの炎が一隻の船を沈めた。
「ちっ胸くそわりぃな!」
エースはそう言って舌打ちをした。
「お、お前・・・。ぷっ!あはははは!!あたしゃあ長いこと生きてきたが、お前みたいな人間は初めて見た!!」
「こーいう体質なんだよ。それより海に落ちたあいつらを引き上げてやってくんねぇか?」
エースはそう言って、壊れた海賊船の破片にしがみつき助けを求める海賊達に視線を移す。
「あぁ?助ける?こいつらにはかつて、この交易船のクルーを何人も殺られてんだ。」
マーベルはそう言ってエースを見つめた。
「お前は本当に海賊なのか?それにしちゃあ優しすぎる目をしてる。」
「そうか?俺は鬼の子って呼ばれてきた人間だぜ?」
「鬼の子?ははっ!人の子の間違いだろ。おい!!ルピタ!チチカナ!クソガキ!クルー達と協力して奴等を引き上げろ!!いいだろ?船長」
「ワシは構わんゼヨ。ただ引き上げた海賊達は牢に入れさせてもらう。それが条件だゼヨ」
船長はにぃっと笑う。
人の子の間違いだろ?
その言葉はエースに、白ひげの言葉を思い出させる。
人は誰から生まれようと皆海の子だ。
そう言って笑う白ひげとマーベルは良く似ていた。
引き上げられた海賊達は、牢屋に入れられロックラックにて
ギルドナイトに引き渡される事となった。
エースは闇夜に浮かぶ月を甲板でぼんやりと眺めていた。
「エース隊長!」
「ん?あぁ。なんだお前か」
そこへやってきたのはルピタだった。
「はいっ!どうぞ!」
そう言って酒瓶を一本エースに手渡す。
「・・・ありがとな」
「いえいえ。いやぁさっきは一悶着でしたねぇ!」
「おー。」
ルピタはニシシと笑って酒を煽ると口を開いた。
「マーベルさんはああ言ってたけど、私はエース隊長のそういう優しいところ良いと思いますよ?」
「は?何言ってんだバカ。」
「優しすぎるのは時に自分を苦しめることになるって、マーベルさんから教わってきたけど・・・。優しい事はいいことですよ」
そんなルピタにエースは思わずぷっと吹き出した。
「あははっ!何が言いてぇんだよお前は」
「んー。何が言いたいのか分かんなくなっちゃったんで、とりあえず飲みましょうか!」
「ほんとバカだな。お前」
「バカにバカって言われたらもう人生おしまいですね」
「喧嘩うってんのか?てめぇ」
そんな二人を月だけが照らしていた。
交易船の夜はそうしてふけてゆく。
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