必死な形相のルピタにエースは唇を噛み締める。
それと同時に白ひげの叫びが村へこだました。
「出航の準備だぁ!!急げぇ!!」
すると蜘蛛の子を散らすように、それぞれが準備を始める。
エースも世話になっていたジェイクの部屋に荷物を取りに走った。
エースは部屋で荷物をまとめながら、ふっと思う。
俺は帰らなきゃならない。
でも、でも。
そんな複雑な思いを拳に込めてぎゅっと握った。
「エース隊長?」
そんなエースの元にルピタがやってくる。
「お、おぅ!ルピタか!なんかわりぃな突然で」
エースは自身の心情を悟られまいと無理に笑う。
「超常現象っていうのは突然起こるものですから!え、と。あのこれを渡しておきたくて」
ルピタはにんまり笑うとあるものをエースに差し出した。
それは丸くて青い鉱石があしらわれたシンプルな首飾りだった。
「これ・・・」
「これは私達ハンターの間では護石と呼ばれる・・・まぁお守りみたいなものです。なんの効果があるかは解りませんが、昔父さんが私にくれたもので・・・」
「そんな大事なもん・・・」
「いいんです。ほら!よく見るとちっちゃい海みたいじゃないですか?・・・だから、海が似合うエース隊長に持っていてもらいたいって思って。」
エースはそれをそっと受けとると、目を細めた。
見たこともないその鉱石は、青い不思議な輝きを放っている。
確かに小さな海のようで、エースは見入ってしまった。
そしてその首飾りを握りしめると、自分の荷物から一枚の紙切れを取り出す。
そしてそれをルピタに手渡したのだ。
「これやる」
「なんすか?鼻かみティッシュですか?それにしては硬い素材ですね」
「ちげぇ!!それはビブルカードって言って・・・まぁいいや。とにかく持っとけバカ」
「ビブル、カード?」
「それがいつか・・・お前と俺を引き合わせてくれる。かもな」
そう言って笑うエースに、?マークを浮かべながらもルピタはその白い紙切れを見つめた。
そんなルピタにエースはフッと笑うと口を開く。
「俺よ、思うんだ。海はきっとどっかで繋 がってる。だからまた会える。次に会うとき俺は海賊の高み。お前は・・・」
「ハンターの高み。ですね」
そう言って互いに笑いあって、
「約束な?」
「はい!」
互いの小指を絡めて指切りをした。
「それじゃあ」
「また会う日まで」
絡めた小指を解いて、ガチリと互いの手を握り
そしてその強い眼差しで互いの瞳を見つめあう。
また会う日まで。
その日がやってくる確証などはない。
しかし、エースもルピタもその日を信じて
一歩を踏み出したのだ。