※ホラー&お下劣表現あり。
「はぁ」
「はぁ」
エースとルピタは甲板の手すりに頬杖をつき、同時にため息を漏らす。
食料調達のため近くの島へ向かうモビー。
しかし、航海士が航路間違えてしまい
遠回りして向かっていた。
「あまーいお菓子が食べたいです」
ルピタはそう言って、手すりにもたれる。
「そうか。」
エースの視線は海の向こうを見つめている。
「チョコレートに、クッキー。美味しい飴ちゃん。後は・・プリンに、ケーキ。スーパーデカイパフェ」
「俺はいい女を抱きてぇ」
「またそれですか。ほんと女好きですねぇ」
二人の視線はぼんやりと霧がかる海の向こうだけを見続ける。
それはまるで幽霊のように虚ろだ。
長い航海。
そしてその最中でまさかの遠回り。
ルピタは大好きな甘いものを口に出来ず、極度のお菓子不足を起こし
キッチンにある砂糖を全部平らげてしまう。
エースはエースで、長いこと女を抱いていないため極度の女不足を起こし
先日船内のナースに手を出そうとして、マルコにブッ飛ばされたばかりだった。
「お菓子、お菓子、お菓子」
「女、女、女」
何かにとり憑かれたように、ブツブツ口を動かす二人。
そんな二人の元へ、サッチ、リィリィ。
チチカナと、マルコがやって来る。
「おい。誰かこの二人を除霊してやれよい」
マルコはエースとルピタの頭をひっぱたく。
しかしこれといって反応がない。
「おー。マルコ」
「お菓子・・・」
二人はやっと振り向く。
「お前ら・・・まじかよい」
マルコが見た二人の顔は、もはや死人だ。
「あああーーーっん!!!お菓子、お菓子ぃ!!甘くて美味しいお菓子が食べたいぃい!!!」
ルピタはそう言ってただをこねる子どものように、床に転がり手足をバタバタさせていた。
「あらあら。みっともないですわ。」
「ルピタは甘いものを摂取しないとこうなるニャ」
チチカナはクスクスと笑い、リィリィはあきれ果てる。
「おいサッチ。なんか甘いもん作ってやれよい」
「無理だ。だってこいつがキッチンの砂糖全部食いやがったからな」
サッチはそう言ってバタバタするルピタを指差す。
マルコは何も言えない。
「あー。女が欲しい」
エースはそんな一同に見向きもせず、空を見つめぼそぼそと呟いている。
「エース。ルピタ・・・いい加減にしろい。島につくまで我慢だよい」
そんなマルコの言葉など、二人の耳に届くはずもなく。
エースは、バタバタと床を転がりながら甘いもんよこせぇええ!!と騒ぐルピタに視線を移した。
「・・・この際。ルピタでもいいか。」
「おいおいエース。なにいってるよい」
「何って。そのまんまの意味だよ・・・」
エースはニヤリと笑って、未だに床に寝転び、ブツブツなにか言うルピタに近寄る。
膝をつき、ルピタに覆い被さろうとすれば
「チョコレートォオオ!!!」
そう言って強烈なパンチをを繰り出すルピタによってエースはブッ飛ばされた。
「・・・はぁ」
マルコはそんな二人を見て頭を抱えてため息をつくばかりだ。
その時。ルピタの動きがピタリと止まる。
むくりと起き出した彼女は、手すりから身を乗り出した。
「ルピタ!!早まるんじゃないよい!!」
「行くなー!!生きてりゃいいことあるって!」
必死にルピタを止めるサッチとマルコをよそに、ルピタがぼそりと呟いた。
「島・・・」
「は?」
「島がありますぅ。わぁ、いい匂い。甘い匂いがするぅ」
「なに言ってんだよい!」
そんなマルコを退かしエースがルピタの隣へ。
「おお。島が見えるぜ。しかもいい女が沢山手ぇ振ってる・・・」
「な、なに言ってんだよ二人とも・・・」
「サッチ隊長!!怖いニャ!!なんかこの二人怖いニャ!!」
「あらあら。頭にウジ虫でも沸いてしまったのかしら?」
サッチとリィリィは寄り添って、エースとルピタを見つめガタガタ震えている。
チチカナは相変わらず笑顔で、とんでもない発言を放った。
「俺、ちょっくら行ってくるわ」
「あー。待ってくださいよぅ」
エースは手すりを飛び越え、真下にあるストライカーに乗り込む。
ルピタは、その後を追った。