「いらっしゃいませー!!ヴィスヴァレ福袋残り僅かとなってまーーす!・・おぇっゴホゴホっ」
あたしの喉も寿命が僅かになってまーーす!
正月。それは初売りという名の稼ぎ時だ。
この界隈は、いろんなショップがひしめいている。
一応激戦区。
とにかく朝から声を張り上げて、福袋の叩き売りに徹底する。
予定では今日中には完売させたい福袋。
福袋の完売が先か
あたしの喉が爆発するのが先か
こりゃ接戦になりそうですな。
そんなことを思いながら、あたしは声を張り上げる。
「野々宮さん」
そこへパートの子。
「ん?どした?」
「少し休んでください。後は私がやりますから!お昼もまだなんでしょ?」
「あー。うん。でもあのバカ・・・いや店長に売り切るまで休憩なしって言われてて」
「私が上手くいっときます!そうだ!野々宮さんの喉が爆発したって言っときますよ!」
「あはは!大惨事じゃん!・・・じゃあ、お言葉に甘えて・・・」
パートの子の計らいであたしはやっと休憩することに成功した。
「あーー。喉いてぇ」
ごくりと飲んだ飲み物がヒリヒリとしみる。
あたしはのど飴を二、三個口に放るとモゴモゴ口を動かした。
「なんか食欲ないし・・・とりあえず一服でも・・・」
あたしは休憩室に備え付けられた喫煙所に移動した。
タバコの煙が喉に刺激を与える。
あたしはそこでケータイがやたらチカチカしてる事に気づいた。
カチリとケータイを開けば、大量のあけおめメール。
うわ。飯田からもきてるよ。
そう思いながら飯田のメールを開いてみる。
はっぴーにゅーいやん!
レイナせんぱーい!
私は今ダーリンとハワイにいたりしてまーす!
バカンスバカンスーー♪
海は青いし、あったかいし
最高ですよ♪
ナニコレ。
呪いのメールかなんかなの?
つか飯田なんなの。
嫌がらせ以外のなにものでもないそのメール。聞いてもいないし、聞きたくもないハワイの豆知識がビッチリ書かれたメールのその先に
続きがあった。
今日はエースの誕生日ですね!
ほんとは会ってお祝いしたかったけど
無理なので、伝えて下さい。
世界で一番愛してます。
最後の一行がなんか異常だが、あたしはそこで今日がエースの誕生日ってことを知った。
「・・・あいつ。今日誕生日なの!?」
何も用意してないし、つか今知った事実だし!!
なんで言わないんだよーーー!
あたしはそこでハッとした。
まさか、あの福袋の詰め作業の時言おうとしてたことって・・・。
その時、休憩室にエースと軽部が入ってきたのだ。
あたしは咄嗟に身を隠す。
なんで隠れなきゃなんないのか分かんないけど、とにかく隠れた。
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