レイナを叩いてしまった。
初めて女を叩いた。
それほどに俺は・・・
彼女が身体を売っているのを許せなかったんだ。

初めてだ。
こんな感情は。
今まで散々女を抱いた。
一回限りの関係がほとんどで
その中には娼婦だっていた。

いままで、こんな感情は生まれなかったのに

レイナがそうしているという事実は
俺のネジを外させるのに十分だったんだ。

エースには関係ねぇじゃん!

確かにそうだ。
俺は確かに関係ねぇ。
この世界にずっといるわけじゃないし、いついなくなるかもわからないあやふやな存在で
それだって、ここにいる以上
俺はレイナにそんな真似させたくなかった。

今まで俺は、彼女が身を削って稼いだ金で・・・
知らなかったというのは言い訳だ。
この世界で、なんにも出来ない俺は無性に悔しくて・・・
その情けなさにうちひしがれた。


レイナが手料理を作ってくれた。
正直、悪魔の実より不味かった。
それだって彼女が慣れない手つきで一生懸
命作ったそれを残すことなんて出来るはずもない。


俺がこちらに来てからどれくらいがたったんだろうか?
レイナと出会ってどれくらいがたったんだろうか?
実際それほど経ってもないのに、それがあやふやになるくらい。
アイツの存在は大きく・・・
俺の中に住み着いちまった。

この感情はなんていうんだろうか?
バカな俺には一生かかってもわかんねぇ気がする。

そんなことばかり考えていたら、俺は眠れなくなってしまっていた。
すると脇のベッドが軋む。
数歩分の足音が聞こえて、俺は声をかけた。

「まだ起きてんのか?」

「あ。エース起こした?ごめん」

「いや。俺も起きてた」

俺はそう言って体を起こす。
それと同時にレイナは部屋の照明をつけた。
明るさに目を細めれば、疲れた顔をした彼女が映る。

「何?さっきの野菜炒めのせいで、腹痛くなって寝れなくなった?」

彼女はアハハッと笑って俺に冷えたビールを差し出した。

「そうじゃねぇよ」

俺はビールを開けて、一口含む。
この世界のビールは俺が今までのんだビールの中で一番うまい。

「隣。いいか?」

「ん。いーよ」

俺はベッドに座るレイナの隣へ腰かけた。

「あのよ。一ついいか?」

俺は一つ気になる事を聞いてみる。

「何?」

「あのさっきの・・・」

「ああ。電話のこと?」

そう。先ほどのアレだ。
電話とやらがなり始め、それを手に取った瞬間彼女は・・・。

「・・・」

黙ったまま動かなくなるレイナ。
俺は何かまずい事を聞いてしまったようだ。

「い、言いたくなけりゃあ・・・ムリに」

俺がそこまで言いかけた時。
彼女は口を開く。

「母親。まぁ正確には母親だったかなぁ」

レイナはビールの缶から視線をはずすことなくこう言った。



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