「やべぇ!!!遅刻だ!!」
「げふっっっ!!!!」
ベッドから飛び起きたら、ベッドの下に寝ていたエースをおもいっきり踏んでしまった。
「あっ。エースごめん!!」
エースは腹を押さえて、あたしを睨んでいるが
今のあたしにそんなことを構っている余裕なんてない。
「何処いくんだ?レイナ。そんな慌てて」
「大学!!!やべぇよ今日の講義落としたら単位もらえねぇよ!! 」
あたしはアタアタ化粧を施す。
「だいがく?」
「あーっ!もう説明してる時間ないから!!帰ってきてから説明する!!じゃーねっ!!あっ!!あたしが帰ってくるまで外出んなよ!!」
あたしはそう言って家を飛び出すと、もうダッシュで大学へ向かった。
あたしはバイクで15分くらいの所にある大学に通っている。
バイクに飛び乗り、エンジンをかけて。
おもいっきりふかして、アパートを出る。
うっし。今日は結構空いている。
このままぶっちぎるぜ!!!
「な、なんとか間に合った」
「レイナー!おはよ!」
「ちょーギリギリじゃーん」
友達のルカとエリナが笑いながらやって来た。
「つかさぁ。この間の合コンのタツヤ君。レイナの事めっちゃ気にしてたよー」
「二次会でもずぅっとレイナの事聞いてきて、若干うざかったけどねー。あれからメールしたの?」
あ。すっかりそいつの存在を忘れてた。
もうこの2日、忙しすぎてあたしの寿命は三年縮んだのだから。
「あー。忘れてた」
「えーーっ!!!?うっそぉ!?」
「珍しい!!レイナが狙った男にメールしないなんて!!なんかあったの?」
なにもないよー。って言うのは嘘になりますが、そう言っておいた。
まさかゴミ捨て場で異世界人を保護したなんて、死んでも言えない。
「今日あたりメールしてみるよー」
あたしは笑いながらやり過ごすと、鞄から教科書を出した。
「えー皆さん。吉田教授が急遽用事が入ってしまったため、1限目は休講になりました。補講の予定は後程掲示板に掲示しますのでー・・」
時間を過ぎても教授の吉田が入ってこなかったと思ったら急遽休講になったらしい。
「やったぁ!ちょーラッキー!」
「朝からハゲた吉田なんて見たくないしねー」
ルカとエリナが次々と言う中、あたしはエースの心配をしていた。
なんだ。休講になるならもっとゆっくりで良かったじゃないか。
エースに大学の事も話せたし・・・
あ。エースの朝飯用意してくんの忘れちゃったよ。
アイツ、大丈夫かなぁ。
「レイナ?あんた大丈夫?」
「なんかボーッとしてない?」
「え。あ。うん。大丈夫だよー」
ルカとエリナが心配そうにあたしを見つめてる。
あたしは笑いながら教科書をしまって立ち上がった。
「そだっ!大学の前に出来たケーキ屋行ってみない?今食べ放題やってるんだってー」
「えっ。まじー?行くー!」
「そういやあ、あたし。クーポンあるよー」
ルカの提案により、あたし達は新しく出来たケーキ屋に行くことにした。
「あ。その前にちょいトイレー」
あたしはトイレに赴いた。
用を足してトイレから出れば、ルカとエリナが猛スピードであたしの元へやってきたのだ。
「ねぇっ!!ちょっちょっと来てよ!!」
「なっ、何!!?」
「いいから早く!!!」
ここは校舎の二階。
その窓にはさっきまで居なかった女子が群がっている。
何事?芸能人でもきたのか?
位の勢いだ。
あたしは、ルカとエリナと共に窓から外を覗く。
「・・・・」
そこには人、というか女子に囲まれる見慣れたオレンジハットが居て
あたしは言葉が出なかった。
まさか。
「えー。あの人誰ー?見たことないよねー?ちょーイケメンじゃん!!!」
「何科の人だろー?ウチも見たことないわー」
ルカとエリナが目を輝かせながら言っている。
その時、オレンジハットが上を向いて・・・
バチリと目が合った。
ハットを片手で押さえ、ニカッと笑って手を振るヤツ・・・。
エースだ!!!
外出んなっつったろーがぁああっ!!!
つぅかなんでこの場所がわかったぁああ!!
「キャーッ!こっち見て、手振ってるー!」
「ヤバーイ!!ウチめっちゃタイプなんだけどー!!」
「ちょっ!!!ごめん!ルカ、エリナ!ここで待ってて!!!」
「えっ!?」
「ちょっとー!レイナー!?」
キャアキャア言うルカとエリナに断りを入れ、あたしは猛ダッシュで階段をかけ降りた。
外に出れば、エースは笑顔であたしに近寄ってくる。
「よぅレイナーっ!ここがだいがくってやつかー。で・・・」
あたしは無言でヤツの腕を掴んで校舎裏へ引きずっていく。
「なんだよーレイナ!」
不満そうに口を尖らすエースに、あたしはスパパパーンっと往復ビンタを食らわした。
「・・・いてぇ。」
「外出んなよっつったよね!!!?」
軽く涙目なエースに詰め寄ると、エースはヘラッと笑った。
「わりぃ。だいがくってどんなところか見てみたくてよ!人に"だいがくっていうのは何処ですか?"って聞いたらここ教えてくれたんだ」
そんなエースにはぁっとため息をついて頭を抱える。
「あのねぇ。あたしここに勉強しにきてんのよ。遊びに来てるわけじゃあないの」
「そうなのか?なんか楽しそうだな!美人もちらほら居・・」
あたしはそこで再びスパパパーンと往復ビンタを食らわす。
「・・・いてぇ」
真っ赤になった頬を擦りながらエースが呟く。
「とにかく。帰りなさい!朝飯はテキトーに食ってていいから!!ゴーホーム!!!!」
「ちぇっ。わかったよ!!ケチ!!」
エースは悪態をつきながら、校舎裏に面する塀をひょいと飛び上がって大学内から去って行った。
はぁ。全く目がはなせねぇ。
あたしは深い深いふかーいため息をついてエリナ達の元へ帰った。
そのあと散々エリナとルカにエースの事を聞かれたが、ちょっとした知人って事にしといた。
せっかくのケーキも味がしたもんじゃない。
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