ゴミ捨て場のイケメン。略してゴミメンは、私の部屋に着くなり食い物を催促しやがった。
ちくしょう。イケメンじゃなきゃ今すぐ窓から捨ててるさ。
とりあえず冷凍食品のピラフと、これまた冷凍食品のハンバーグを出して レンジでチーン♪
「なんだこれ?すげぇな!」
ゴミメンは何故だか電子レンジに興味津々だ。
何?何時代の人?
できた冷凍食品を皿にのせる。
またもやここで奴は興奮していた。
「すげぇ!!勝手に料理を作ってくれんのか!!」
奴は席につくなりものすごいスピードで食い始めた。あたしは人間ってこんなスピードで飯食えるんだと、軽く感動した。
あたしは冷蔵庫から缶ビールを取りだしのみ始める。
それにしても、この男何者なのか?
イケメンだからといって、家に上げてしまったが・・・何かがおかしい。
まだ残暑が残る季節だが、夜になれば冷えるこの時期に上半身裸。
背中には何かのマークの刺青。ついでに腕にも刺青。
あれか。やくまるさん関係か。
いや。やくまるさん関係は、あれだ・・もっとこう、竹内力みたいなあれだ。
酔っぱらって潰れた一般人?
それにしては、鍛えられた肉体。
あたしは500の"のどごし生"を一気に煽った。
「ねぇあんた名前は?」
黙々と食べ続ける奴に、あたしは問いかける。
「エース。」
えーす。あーあれか。チームの中でずば抜けた人の事か。
「ん?何のエースなの?」
「は?」
あたしの質問に、何かのエースはモゴモゴしながらは?って言った。
あたしがは?って言いたい。
「いや。だから何のエースなの?野球?サッカー?それとも」
「なに言ってんだお前。俺の名前だよ。ポートガス・D ・エース。"火拳のエース"っつったら聞いたことぐれぇあるだろ?」
あ。エースっつう名前なのね。
だが、しかし。
ぽーとがすでぃえーす。
ひけんのえーす。
残念だが聞いたこともないし、ガス会社はガスパッチョ位しか知らない。
「ごめん。知らない」
「マジかよ!!一応五億の賞金首なんだけどなぁ」
エースはそう言って口いっぱいにピラフを掻き込んだ。
五億?賞金首?
ん?この人国際指名手配犯なのか!!?
いや。まて。あたしはバカだがニュース位見る。
そんな国際指名手配犯がいれば日本でもニュースになるはずだ。
しかしあたしはそんな名前聞いたこともない。
「あんた何者なの?」
あたしが単刀直入に言ってやれば
「海賊」
彼はそう答えた。
「へぇ・・・かいぞく・・・へぇ」
あたしは残念な人を見る目で彼を見た。
そんな残念な彼は不機嫌そうに眉を寄せる。
「んだよ?その目」
「いえ。・・・何でもないです」
あたしは視線を下げた。
「俺からも質問させてもらっていいか?」
「ええ。どうぞ・・・」
残念なイケメンとはまさにこの事である。
あたしは二本目のビールを開けながら、半分聞き流すように返事を返した。
「ここは何処だ?」
「あたしん家ですけども」
あたしは煙草に火をつけ、ため息混じりに煙を吐く。
「そうじゃなくて!なんつぅ島なんだ?見たことねぇもんばっかりだしよ」
「日本ですけども」
あたしが答えれば、エースは眉をつり上げる。
「にほん?聞いたことねぇ島だな。グランドラインにはまだ得体の知れねぇ島があるんだな」
「ぐらんど?何?」
「グランドライン。しんねぇのか?」
ええ。知りませんとも。グランドキャニオンなら知ってますが。
あたしは二本目のビールを飲み干した。
「あんたどっから来たのさ?わけっちゃあわからん格好してるし、海賊とか、グランドなんたらとか・・・もう意味わかんねぇ」
酔いが回ってきたのをきっかけにあたしは捲し立てる。
もう思考回路はショート寸前なのよ!!
「それが俺も分からねぇんだ。海に落ちちまって、溺れて・・・それから記憶がねぇんだよ。気付いたらあんたがいた」
「・・・へぇー」
あたしは水を張った灰皿に煙草をほおる。
ジュッという火の消える音だけが響いたのだ。
prev next
back