いつもに増して、バイクのスピードを上げた。
途中猫を轢きそうになってしまう。
それくらい急いで自宅へ急いだ。エースが待つ家に。

ドアノブを回す手が震える。
もしドアを開けて、エースがいなかったら?

いなかったら、どうしよう?

そうこうしていたら、扉が勝手に開いた。

「いでっ!!」

「うぉっ!!レイナ!」

そこにはエースが居た。
いや。
まだ居てくれた。

安心したのか、あたしは腰が抜けて立てなくなってしまったんだ。
ヘナヘナと座り込むあたしに、エースは驚いてワタワタしていた。

「ごめ・・っ立てない」

なんのために溢れてくる涙なのか?
あたしはそれを飲み込むのに必死だった。

「わりぃ!!痛かったのか!」

涙目のあたしを心配して、おろおろとするエース。
そんなエースを見てたら、堪えきれずに溢れる涙。

「レイナっ!?どうしたんだよ?!」

「ごめ・・っごめん」

「ったく」

あたしの手を引きそのまま抱き抱えて
エースは部屋に入っていく。




ベッドに座るあたしに視線を合わせるようにして座るエース。

「何があったんだよ?」

「・・・」

いまだ溢れ続ける涙が止まらない。
ああ。今あたしすっごく変な顔してる。
化粧ぐちゃぐちゃだろうし、つけまとれてるし、鼻水も出てるだろう。
そんなあたしの顔をエースが真剣な顔で見つめて
きた。

「・・・エース。いかないで」

やっと出た言葉はそれだった。


その言葉にエースが目を見開く。

「いかないでよ。」

「なんだよ。いきなり」

まるで子どもを宥めるような優しい声音でエースは言った。

「だって、エースはっエースは海賊でしょ!?もしかしたら、敵と戦って・・とか。カナヅチだから海でおぼっ溺れたりとかして・・しんっしんじ・・」

死んじゃうかもしれないじゃん。

その言葉がでなかった。

自分でも何を言っているかわからないくらいぐちゃぐちゃな言葉達。
あたしはエースの未来を本人に話すほどの勇気はない。
唇を噛みしめ、嗚咽を漏らすあたしの頭にぽんっと置かれた暖かい手のひら。
俯いていた顔を上げれば、エースが優しい笑顔を見せた。



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