何故かメグミは家に上がり込んできた。
エースの風呂上がり姿に悶えてたと思ったら、今度はあたしに質問攻めをしてくる。
どうして何故?
このエースは本物なのか?
どうして何故?
面倒なので、エースの出会いから全てを話してやれば
またしてもハフハフ言い出した。
「それは逆トリってヤツですね!レイナ先輩!」
「なに?ヤキトリ?」
ヤキトリみたいな単語にあたしは眉を寄せる。
「ヤキトリじゃなくて、逆トリです!逆トリップ!」
「ぎゃくどりっぷ?」
なんだそれは。
新しいコーヒーのドリップ方法なのか?
「コーヒーを逆にドリップするの?それドリップできなくね?」
「ちーがーいーます!ドリップじゃなくて、トリップ!つまり、漫画のキャラクターが違う世界にきちゃった事を逆トリップっていうんです!」
顔を真っ赤にして熱弁するメグミに若干引く。
「へぇ。あぁ。そう」
あたしは軽く受け流すと、タバコに火をつけた。
ぶっちゃけ早く帰ってくんないかな。
予定詰まってんだよ。
つか、帰って引っ越しの荷物でも片付けろよ。
なんて思っていたら、エースが着替えて出てきた。
「レイナー。俺の帽子どこおいた?」
エースは呑気なセリフを吐きながら、帽子を探してあちこち歩き回ってる。
「ひゃああああ!!!エースっ!エースが私の前にいるぅうう!」
メグミはキンキンと金切り声をあげた。
うるせぇ。少し落ち着けないのか。
「おっ!あった、あった」
エースはそう言って帽子をひょいと被った。
「きゃああああ!!!!エースがぁああ!あばばばばばば!」
メグミは最早、騒音製造機だ。
「なぁ。レイナさっきからうるせぇけど、誰だコイツ」
エースはさらりとメグミを指差す。
「あー。この子ね・・・」
「あっわたっ私は飯田メグミっていいます!!!メグタンでもメーたんでも・・・好きに呼んで下さい!」
メグミがしゃしゃってきたので、
わかったよ。飯田。
と言ってやる。
「メグミか。俺はエー・・」
「知ってます!!!」
エースが名乗ろうとするのを阻止し、メグミが口を開いた。
「ポートガス・D ・エース。年は二十歳。誕生日は1月1日。身長は約185p。メラメラの実の能力者で、白ひげ海賊団二番隊隊長・・・ですよね♪」
「あ、お、おぅ」
エースが呆気にとられている。
飯田。お前何者なんだ。
っていうかエースってタメなんだ。
あたしは初事実に驚いた。
メグミはニコニコと続けた。
「私。エースがだいだいだぁい好きなんです!ワンピースの中で一番だぁい好きなんですよー」
何故大好きを二回言ってみた?
大事なことは二回言う主義なのか。
あたしはタバコの煙をモハッと吐いた。
エースはというと、呆気にとられながらも"大好き"
という単語に照れている。
なんだコイツら。ぶち回していいだろうか?
「もちろんルフィも好きですし、白ひげ海賊団のみんなも大好きですよ♪」
メグミがそう言えば、エースの顔が輝いた。
「お前俺の仲間しってんのか!?」
「はいっ♪」
「マルコっているだろ?あのパイナップルみてぇな頭のやつ」
「マルコさん知ってますよー!不死鳥になるんですよね!」
なんだ。
なんだ。
なんなんだ。
すっごぉおおく!!!
イライラする。
あたしが知らない話ばっかしやがって。
すっごぉおおく
気分わりぃ!!
あたしは財布を取り出すと、無言で玄関へ向かう。
ちくしょうあいつ等話に夢中で、玄関から出ようとするあたしに気づいてもない。
「レイナ?どこいくんだ?」
エースがそう言ってたけど聞こえないふりをして扉を締めた。
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