「よぉうし!明日は休みだし・・・あたしの失業記念を祝してパーティーしようか!!」

彼女はそう言って、いつかのように大量の酒を持ち出してきた。

「先に潰れんなよ?」

そう言ってニヤリと笑うレイナ。

「誰に向かって言ってんだよ。バーカ」

俺もニヤリと笑ってやる。


それから酒を飲みつつ、いろんな事を話した。
オヤジやルフィの事。
船のみんなの話。
俺が今まで行ったことのある島の話。

レイナは時おり笑いながら、時おり真剣に・・・
俺の話を聞いてくれる。


「ねー。えーすぅ。」

数時間後、レイナはベッドに大の字になって天井を見つめていた。

「なんだよ。もう潰れちまったのか?」

俺は笑いながら、酒を口に含む。

「えひゃひゃ。あたしゃあまだ潰れちゃいねぇよう!!」

完璧に酔っているのだろう、変な笑い声をあげながらムクリと起き上がり彼女は言った。

「そうか。じゃあ・・・ほら。飲めよ!」

俺の悪戯心をくすぐるレイナにグラスを渡すと、ドボドボと酒を注いでやった。

「うぇい!!にぃさんやるねぇ!あたしを酔わせてどーすんだぃ?」

トロンとした目を細め、口角をあげた彼女が俺を覗き込んでくる。
真っ赤な顔をした彼女は、もうでき上がっていた。

「どうにもしねぇよ。バカ」

そんなこと言われたら、どうにかしちまうぞ。
と心の中で呟いてみる。

「いひゃっひゃっ!そーかい!そーかい!」

レイナはまたしても変な笑い声をあげて、俺の背中をバッシン、バッシン叩いてきた。

彼女はグラスにはいった酒を、まるで水を飲むかのように流し込むと
げふっとゲップを一つ。

「ねぇ。えーす」

「なんだよ?」

「あたしゃあ・・・汚れてるかい?」

レイナはそう言って、俺を見つめてきた。
潤んだ瞳に、柔らかそうな唇。
彼女の赤く染まった頬に手を添えて、俺は言った。

「お前は綺麗だよ」

潤んだ瞳が綻んだ。

そんな顔すんなよ。
俺がもたねぇじゃねぇか。
一瞬の沈黙がこんなに長いことを初めて知った次の瞬間だった。



「げひゃひゃ!ん。あたしは綺麗さ!あったりまえの事いってんじゃねーよ!!バカ野郎!!」

俺は何故か怒られた。



レイナは
エキセントリック!!
という謎の単語を残しバタンと倒れると、そのままスヤスヤ眠り始める。
まったく・・・なんて酒癖の悪い女だ。

俺は彼女をちゃんベッドへ寝かせると、その幸せそうな寝顔を見つめる。

「幸せそうに寝てやがる」

俺は目にかかった前髪を少しずらしてやった。
半開きの唇から、ん。と声が漏れる。
それがどうしようもなく官能的で、俺は体が熱くなった。

「バカはお前だ。襲っちまうぞ。」

そんな声は届くはずもない。
俺は、彼女の唇に自分のそれをそっと近づける。

そこでハッとした。

出来ねぇ。
今それをやっちまったら、金でレイナを買った奴等と同じになるような気がした。
何よりコイツは俺の恩人だ。
そんな真似は出来るわけないのに・・・



俺とコイツが同じ気持ちだったらな。



そんな柄にもねぇことを思ってしまう俺は、きっとおかしくなってしまったんだと思う。





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