出来上がったのはちょっとばかし焦げてしまった野菜炒め。
見た目は・・・焦げてる以外はいいと思います。
なんかしゃきしゃきしてそうだな。

「出来たのか!?」

後ろからウキウキとした声。

「あー。うん」

果たして食えるものなのか。

これ。


「これがレイナの手料理かぁ!」

「あっ!ちょっとまだ味見してな・・」

遅かった。
食いしん坊は笑顔でそれを一口。

しばらくすれば、笑顔がみるみる消えてって
エースはぶるぶるっと身震いした。

え。
なんかヤバそうだな。

あたしは自分で作ったそれを一口味見した。

おぇ。
なにこれ。
これ。野菜炒めじゃない。
どっちかっていうと、生野菜の油和えだ。
しかもなんか変に甘くて苦い。
そして、ジャリジャリするのはどうしてだろ?



本品は食べ物ではありません。
幼児の手届かない
場所に保管してください。
また万一口に入れてしまった場合十分にすすいだあと、すぐに医師の診断を受けてください。

って説明文がぴったりだ。


おぇええ!!!くそ不味い!!!

あたしもぶるぶるっと身震いした。

「あー・・・エース君。これは、食い物じゃあないので・・・片付けますね」

あたしが皿を下げようとすると

「下げんなよ。まだ食ってんだから!」

そう言って
新感覚!生野菜の油和え。(本品は食べ物ではありません)を
ガツガツ食い始めたんだ。

「ん!!うめぇ!!」

いやいやいや。涙目で言われても
なんだかなぁってなっちゃうから!!
無理して食ってんのバレバレだから!!
逆に悲しくなっちゃうよ!!


エースは最後の最後まで綺麗に口の中へ。
ゴクンと飲み込んで


「ごちそうさまでした!うまかった。ありがとな!!」

って笑う。

その光景に、あたしは幼い自分を思い出した。
その時作った野菜炒めも、生焼けで焦げていて
変な味だったけど
それを美味しいねって食べたのは
あの女だった。

そんなあたしを現実に引き戻すように、家電がなった。
滅多にならない家電。公共料金を滞納したときだけ鳴る家電。解約すら考えている家電。
その家電がなったんだ。

知り合いならケータイにかてくるはず。
滞納はしてないし・・・誰だろ?と思いながらもあたしは受話器を取る。

「もしもし?」

「・・・」

相手は無言。
いらっとしたあたしは、大きめの声で言った。

「もしもし!聞こえてます!?」

すると相手はか細い声でこういったんだ。

「レイナ。お母さんです。わかりますか?」

って。


それを聞いた瞬間。あたしの中の何かがキレて。
気づいたら、電話を電話線ごと引っこ抜いてぶん投げていた。

「レイナ?大丈夫か?」

「あ。うん。ごめん。」




その夜。あたしは眠れずにいた。
久しぶりに聞いたあの女の声が頭から離れない。

あたしは立ち上がってキッチンへ向かおうとしたその時

「まだ起きてんのか?」

掠れたエースの声で、あたしは足を止めたんだ。




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