「おはよーございまーす」

「おっはよーす!!なんすか、リナさん今日は早いっすねぇ!!」

受付で電話番のチャラ男が、ゲームやってた。
リナと呼ばれたあたし。
その名はここでのあたしの名前だ。


「今日は早くきて、早くあがる。ラストまではいれないからね!」

「えぇーっ!!リナさん一応うちの主力なんすよー?困りますー」

「うるせぇよ。帰るったら帰るの」

電話番のチャラ男は
オーナーに怒られちゃうーっていいながらも
ゲームやってた。

「あらーん!リナちゃん!オハヨ!」

噂をすればオーナーのご登場だ。
がっしりしたオネェオーナーだが
コワイ人関係に属する恐い人なのである。
その証拠に、さっきまでゲームやってたチャラ男がちゃんとしてるではないか。

「おはようございます!あのー・・・今日ラストまでいられないんすよねぇ」

「あらぁん。彼氏でもまってんのん?」

「いや。違いますけど・・・とにかく早めにあがらしてください」

「うふふん!いいわよん!リナちゃんにはがんばってもらってるから!」

オーナーはそう言って意気揚々と裏へ引っ込んでいく。



あたしがしてるバイト。
それはデリヘルだ。
表通り向きには出張マッサージって事になってるが、実際は本番ありなんでもありな店。

こんなことエースにも友達にも言えないっしょ。

だからあたしは誰にも言ってない。


日払いで、月に換算すりゃあ結構な金になる。
学費だってなんとかなるし、日々もとりあえず暮らせるし、貯金だってちまちまできるし。

あたしは濃いめに化粧を施して、指名を待った。
今日は幾ら稼げるだろうか?

しばらく待ってれば

「リナさーん!!指名っすよー!」

というチャラ男の声。

「へぇい!今いくよ!!」

あたしはよっこらせと送迎の車へと向かった。






「うへぇ疲れたー」

指定されたホテルで仕事を終えて
あたしは迎えにきた送迎の車へと乗り込む。

「おつかれさん」

この送迎のあんちゃん。
妻夫木似のイケメンだ。

「あー。あの客どうにかなんないわけ?毎回うぜぇんだよ」

「しょうがない。うちの常連さんだからなー」

妻夫木は笑う。
こちらとら笑い事じゃねーんだよ。
そう思いながらあたしはタバコに火をつけた。

「リナちゃん最近彼氏でも出来たの?」

「はぁ?なにいってんだよ」

「あはは。ごめん。なんかイキイキしてるからさ」

あたしが?
イキイキ?
げっそりの間違いだろ。
あたしゃあこう見えて、異世界人を保護して大変な思いしてんだ。

でも。

あたしは車窓から流れ行く街並みを覗いた。

エースを保護してから、あたしの生活は変わった。
一番変わったのは、誰かが家にいてくれて
おかえりと言ってくれること。
何年、何十年振りのことだろうか。

エースは何時いなくなってしまうんだろう。

彼はこの世界の人間じゃない。正確には漫画のキャラクターで
いきなりあたしのアパートのごみ捨て場にいて
きっといなくなるのもいきなりなんだろうな。

また誰も居なくなるんだろうな。

ちょっと涙腺が緩んで、潤み始めたあたしの瞳に暗くなりかけたこの街が映る。

「リナちゃん。ついたよ」

気付けばもう着いていて、あたしは車から降りた。

「お疲れ様でーす」

チャラ男がまたゲームをやってたので
あ。オーナー!
とわざとらしく言えば、ゲーム機をぶん投げて驚いていた。

あたしは控え室に戻ると次の指名を待つ。




prev next

back






「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -