俺はピタリと手を止める。
この本の続きはあるのだろうか?
だとしたら、俺の未来は描かれているのだろうか?
俺はちゃんと


奴にケジメをつける事が出来ているのだろうか?


もしかしたら未来が描かれているかもしれないこの本の続き。
俺は一瞬それを見てみたくなった。


「・・・らしくねぇ」

未来がどうであれ、俺は俺だ。
ケジメだってちゃんとつける。

らしくない考えを振り切るように、俺はまた机に突っ伏す。


ふわりと襲う眠気に勝てず、俺はそのまま眠りに落ちた。





「ん・・・」

重い瞼をあければ、もう辺りは夜だった。
キッチンの灯りだけが煌々とするなか、俺は辺りを見回した。

「もう12時じゃねぇか。」

フッとベッドの方に視線を移す。
レイナはまだ帰ってなかった。

「さすがに遅ぇだろ」

俺はレイナが心配になって、外へ飛び出した。



「なにやってんの?」

アパートのすぐ側で、レイナにばったり出くわす。
何時もよりケバい化粧を施した彼女が、怪訝そうに俺を見ていた。

「遅ぇ!!!心配したろーが!!!」

正確にはさっきまで寝ていた。

「だから。遅くなるっつったじゃん」

レイナはそう言ってため息を一つ。

その後ふわりと笑って

心配してくれてありがと。

って言った彼女に、俺は心臓を掴まれるような間隔に陥った。

「お、おぅ」

俺は戸惑いを隠せずに、その場で動けなくなってしまったというのに
レイナは何の気なしにさっさとアパートへ戻っていく。

「あ。片付けといてくれたの?ありがとー」

レイナはそう言ってまたあの笑顔で笑った。
笑った顔が凄く可愛くて、俺はまた戸惑ってしまう。

「ま、まぁな。俺これくらいしか出来ねぇし」

「確かにそうだね」

しかしそんな彼女はたまに・・・というかほぼきつめな事を言うんだ。

「飯食ったの?」

「いや。食欲なくてな」

「えっ!!!?あんたが!!?大丈夫?死ぬんじゃない?」

レイナはそう言って、冷蔵庫から出来合いのハンバーグを出して
でんしれんじに放り込んだ。
そう言えば彼女の手料理ってやつを、俺は食ったことがない。

レイナの作る飯は美味いのかな?

「レイナ。あのよ・・・」

「あたし風呂入ってくるから。ちゃんと食べなよ」

俺の声は届いてないみたいで、彼女はハンバーグと大盛りの飯を机に置いてさっさと風呂に入ってしまった。


「いやーっ!風呂上がりのビールはしみるねぇ!!」

風呂から上がったレイナは顔に似合わずオッサンみてぇな言葉を発する。
干したイカを噛みながら酒を飲む様は、向こうの世界にいるむさ苦しい俺の仲間を思い出させた。

「あー。エース。明日もバイトだから」

「また遅ぇのか?」

俺はハンバーグを食べようと動かしたフォークを止める。

「明日はなるべく早めに帰るよ。」

「一体何の仕事してんだよ。お前は」

その質問に、少しだけ彼女の顔色が変わった気がした。

「・・・内緒」

「・・・なんだよそれ」

レイナはビールを一気に飲み干して、席を立つ。
俺は食べ終わった食器を流しに置いた後、俺はレイナに視線を移した。

「なぁレイナ。」

「なーに?」

彼女はテレビから視線を移すことなく答える。

「俺、お前の手料理食ってみてぇんだけど」

「へぇー・・・・・って、はぁあああああ!!?」

近所迷惑になるような大音量で、レイナが叫んだ。
なんだ?俺なんかまずい事言った?

「あんた。あたしの料理って・・・本気でいってんの?」

「ああ。食ってみてぇ。駄目なのかよ」

「いや。別にかまわないっすけど・・・死ぬかもよ?」

レイナの顔がひきつっている。
死ぬかもよ?
そうか!死ぬほど美味いって事か!!

「今度作ってくれよ!楽しみにしてる!!」

俺がそう言えば、彼女は気まずそうに頬を掻いた。







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