あたしは震える手で漫画のページを捲った。
教授の声が遠くに聞こえる。

「・・・」

ごくりとツバを飲み込んで、一ページ一ページに目を通す。
変な汗が背中を伝うのがわかって気持ちが悪かった。

ワンピースって漫画はどうやら海賊の話のようで、エースが言ってた単語がどんどんと出てきた。

ぐらんどらいん
海賊
海軍・・・

そしてそれは現れたんだ。

「エース・・・」

そこにはエースが居た。正確には描かれていたんだ。
黒い癖のある髪。
オレンジのテンガロンハット。
不適に笑う顔。
頬のそばかす。
食いながら寝るその様。

白ひげ海賊団
二番隊隊長
ポートガス・D ・エース

あたしはそこで咄嗟に本を閉じる。
ドクドクと波打つ心臓。
このまま破裂して、あたしは死んでしまうんじゃないかと思った。

でもそれが事実。

これはいったいどういうことだ?

こんなことがあるはずがないんだ。

もしかして、あたしの家にいるエースは・・・
この漫画のエースに憧れてて・・・あんなことを?
いや。そんな感じじゃあなかった。
憧れだけで、食ってる途中に寝るなんて荒業出来るはずもないし・・・
嘘をついてるようには見えない真っ直ぐな目。

あたしはまた漫画を開く。

見れば見るほど漫画の中のエースは・・


あたしの家にいるエースなのだ。



いつの間にか講義は終わった。
しかし、あたしはそこから動けずにいて
漫画のページはエースが描かれているページを開いたままで


こんなことあってたまるか。

あたしは後片付けをして席をたった。
今日はもう講義はない。
家に帰ろう。
エースに言わなきゃ。



ほぼ放心状態でバイクを押しながら外にでれば、校門の所に人溜まり。
なんだか猛烈に嫌な予感がして、走ってその場へ向かう。


あぁ。やっぱりだ。

塀にもたれかかり、あのテンガロンハットを深く被ったエースが座っている。
人をかき分け、エースに近づくと

「起きんかい!!!」

拳を一発。彼にプレゼントしてあげた。
それを見た周りが一斉に後ずさっていく。

「レイナ!!」

頭を押さえて勢いよくおき上がるエース。

「どこでも寝るんじゃないよ!このすっとこどっこいがぁ!!!」

「す、すっとこ?」

「・・・はぁ。もお行くよ」

エースを連れてそのまま学校を後にした。

「・・・わりぃなレイナ。あのあと家に戻ろうとしたんだけどよ・・・」

「道わかんなくなったんでしょ?」

「・・・おぅ」

エースは申し訳なさそうに呟く。

「だから行ったじゃん。外出んなよって」

「わりぃ。」

「・・・どっかで飯でも食ってく?」

「え?」

「腹・・・減ってないの?」

「・・・」

エースの代わりに返事をしたのは、彼の腹の虫。

「乗って」

あたしはエースにそう言って、バイクに跨がる。
彼は困惑しながらも、あたしの後ろへ跨がった。

「ちゃんと掴まっててよ?」

あたしは思い切りエンジンをふかした。


エースはこれから知る真実になんて言うんだろう?
あたしは少なからず信じらんないよ。
でも、あんたは確かにここにいて
あんたは確かにここに描かれてて

あーもう。考えんの

めんどくせぇ!!!!


そんなあたしの思いを振り切るように、バイクのスピードをあげた。









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