大食いテンガロンが食料を全滅させたせいで、あたしは食うものがなくなった。
朝食おうと思って買ってあった、ベーグルさえない。

くっそ。ちくしょう。このやろう。

「そういえば、昨日お前いきなり寝ちまったからベッドまで運んでやったからな」

そうか。そんな笑顔で誇らしげにいわれても絶対礼なんてしてやらねぇ。
あたしは無言で奴を睨んだ。

「そう言えば、お前名前は?」

「は?」

あ。あたしこいつに名前言ってなかったけ?

「・・・・レイナ。野々宮レイナ」

そう言えば、エースは目を丸くして

「変わった名前だな。」

って言ってまた笑う。
いや。お前の名前のがよっぽど変わってるよ。このガスパッチョめ。

あたしはへらりと笑う奴に背を向けて、財布を持つと玄関へ。

「よろしくな。レイナ」

そんな声が背中に降ってくる。
よろしく?いや。遠慮する。
いくらイケメンでも、残念なイケメンは遠慮する。

でも。

チラリと後ろを見れば、エースは笑っていて
その笑顔にあたしはすごくドキドキしてしまっているのだ。
罪なイケメンだ。この罪メンめ。

「ところでレイナ。どこいくんだ?」

「買いもん。」


あたしが買いもんいってる間に出てって下さい。っておもってるのに・・・

「買いもん行ってくるから、待ってて」

なんてあべこべが、口から滑り落ちてしまった。
何やってんだあたし。誰かあたしを殴ってくれないか。

家を出て近所のコンビニへ。

ああ。なんであんなこと言ってみた?あたし。
さっさと出てけって言えば良いのに。
それは心のどこかで、こいつをもっと知りたいっていう欲があることを証明してたんだ。

「それにしても・・・」

あたしは立ち止まり、うーんと唸る。
素面の頭で考えてみようか。
あたしは頭の中を整理した。

昨日の夜。ゴミ捨て場でイケメンを保護。

よく食うイケメン。

意味わかんねぇイケメン。

あたし寝てしまう。

確かこれが昨夜の流れだったよな。

それからイケメンの言ってた事を整理した。
ポートガス・でぃ・エース。ひけんのエース。ぐらんどらいん。海賊。賞金首。

そこで昨日は気づかなかった事に気づいたんだ。

ぐらんどらいん。この単語は聞いたことあるかもしれない。

でもどこで聞いたんだっけ?
えっと確か・・・。同じ大学の男子が言ってたような・・・。

「ん?」

あたしは周りの突き刺さるような視線に思考を停止する。

なんだか通行人がすげぇ見てくる。
それもなんか、好奇の目っつうかなんつぅか。
とにかく何あれー?みたいな眼差しだ。

あたしは自分の格好を確かめてみる。
昨日そのまま寝てしまったため、合コンに着てった服を着用。
シフォンのチュニックに、ホットパンツ。
至ってふつーだと思う。

「なぁ、レイナ。」

あれ。聞き覚えのあるこえだな・・・

って・・・

あたしは恐る恐る振り向いた。
あぁ。居るわ。あたしの後ろに上半身裸の好奇な奴。

「あはは!レイナお前すっげぇ見られてるぜ!!」

見られてんのは


てめぇだ!!!!

あたしは奴の腕を掴んで人気のない裏路地に引きずり込んだ。
断じて襲うわけじゃない。安心してほしい。



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