ざーんと海が鳴く。
うっすらと明るくなった空。
その空を旋回し、呑気な鳴き声をあげていたのはカモメだった。

エースがすっと瞳を開けば
どうやらあのまま寝てしまったらしく
目の前にはルピタの眠る顔があった。
泣きはらしたその目の周りの赤みは
エースの心に痛々しく突き刺さるように映る。

突然突きつけられた真実に、コイツは一人で耐えようとしてるんだ。

そう思えば更に胸が痛んだ。

そして。

あのルピタの弟だという青年ルシファ。
自分を憎み、血を憎み、全てを憎むその様は
昔のエース自分自身を見ている様でならなかったのだ。

そんなことを思いながらも、ルピタの頭をひと撫ですれば
一瞬ぎゅっと寄る眉間のシワ。
次の瞬間。ばちりとその瞳が開いた。

そういえば。この状況をどうしよう。

エースが戸惑い、口を開こうとした瞬間。

「ふっかぁあああーーーつ!!!」

「っぶぅ!!!!」

いきなり立ち上がり出すルピタ強烈な
右フックがエースを襲った。


「あ、おはようございます!」

「・・・てめぇ」

涙目で睨み上げたエースに、ルピタはへらりとヤル気が抜けるようないつもの笑顔で返す。
それを見たエースは安堵し、立ち上がると
ポスンとその大きな掌をルピタの頭に置く。

「ったく。」

「えへへ。あのですね私・・・」

「んだよ」

「父さんに夢で会えました」

その言葉にエースは目を見開く。

「そして、多分あれが私のお母さん・・・」

儚げに揺れるルピタの髪。
どんどん登ろうとする朝日が、少し眉をよせ悲しげに微笑むルピタを映し出す。

「直接父さんとお話が出来たわけじゃあないんです。父さんが黒髪の綺麗な女の人と一緒にいて、二人の腕にはそれぞれ赤ちゃんが抱かれてました。多分赤ちゃんの私と・・・弟。」

「ルピタ・・・」

「父さんとお母さん笑ってて、幸せそうで。」

「・・・」

「だから。私は背負います。どんな残酷な真実だったとしても、弟を救いたい。」

真っ直ぐな瞳がエースを捉える。

「大丈夫です。なんとかなります!」

その瞳がふにゃりと綻べば、エースも笑った。

「お前がなんとかなるっつうなら、なんとかなるだろ」

「へへっ」

そんな二人の元へやってきたのは
ニュースクー。

「いつもより早ぇな」

エースはそう言って新聞を受け取るとそれを目で追っていく。

「なんだよこれ・・・」








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