「こうして、その父親は過去を捨てましたとさ!おっしまい」
青年がにこやかに笑う。
「・・・」
周りはしんと静まり返り、青年が話したその残酷な真実を処理しようと言葉すら発せなかった。
その中でも顔を青くさせていたルピタに青年がにやりと笑う。
「ルピタ」
名を呼ばれ彼女はびくりと反応した。
「あの時、俺お前に聞いたよね?」
そう。
『ルピタ。お前に俺の名が言えるか?』
彼女の中でフラッシュバックする
あの問いかけ。
『あんたの名前なかんか知るか!!』
そう。知らないのだ。
なぜなら
「俺の名はルシファ。・・・ルピタ。お前と血のつながった正真正銘の家族」
それは父親が彼女についた
唯一の嘘。
「やっと会えたね。姉さん?」
どくんどくんとルピタの心臓が脈打つ。
このまま爆発してしまうのではないかというくらい
速く、鈍く。
「怖い?パパが怖がったみたいに。あの世界の全人類が怖がったみたいに。」
クスクスと含み笑いで問いかけるルシファに
ルピタは言葉を発することが出来なかった。
「いいよねぇ。姉さんは!同じ血が通ってるのに、パパから愛されて、皆に愛されて。なんでだろう?まー、どうでもいいけどさ」
ルシファはそう言ってケタケタ笑った。
「私は・・・」
ようやく発したルピタの言葉。
「私はっ怖くない!!」
「へぇ?」
「でも、白ひげ海賊団の皆に手ぇ出したら・・・」
「出したら?どうする?」
「あんたを許さない!!」
するとルシファは目をまん丸くさせたあと、ゲラゲラと笑い始めた。
「ギャハハハハハ!!許さねぇ?おもしれぇ!やっぱあんたも親父や他の人間共と一緒さ!!ホントの家族より紛いもんの家族が大事か!?」
ルピタは唇を噛み締めてルシファに近づこうと一歩を踏み出した。
それを止めたのはエースだった。
「エース隊長?」
「おい。クソガキ。てめぇにいい事教えてやるよ。血の繋がりがあろーがなかろーがそんな事ぁ関係ねぇんだ。必要なのは信頼と絆。てめぇが今ルピタに言ってることは駄々こねてるだけじゃねーか!!」
するとルシファはピタリと笑うのを止めその赤い殺気立った目をエースに向ける。
「信頼と絆?・・・アホかてめー。あーやめた。ティーチにゃわりぃが今ここで全員殺すわ」
その瞬間ルシファから放たれるどす黒いオーラ。
「あれは!」
ルピタが声をあげる。
「狂竜ウィルスを含んだ粉塵ですわ!!皆さん息を止めてくださいな!!!」
チチカナは狩猟笛を構え
ルピタは大剣を抜く。
その時だった。
「グララララ。」
響くのはあの主の声。