宴も終わり
甲板からはいびきの大合唱が不協和音を奏でる夜更け。

そこでまだ酒を飲むルピタの姿があった。

「ふぃー。なんだか酔えないな」

そんな独り言を呟いて甲板の手すりにもたれる。

「おめぇは酔うとうぜぇから、酔わねぇ方が皆の為だな」

独り言のはずだったそれに返事が返って来る。
それに返事をしたのはエースだった。

「あ。エース隊長!」

しかし、その足取りは覚束無い。
酒に強いエースが珍しく酔っていた。

「あれ?もしかしてエース隊長酔ってますぅ?ぷぷっ」

「るせぇ!!」

エースはそう言って酔った目でルピタを睨みつけると、彼女がもたれる手すりの隣にもたれる。
そこでグビグビと酒瓶を煽っては、あー。とやる気の抜けそうな声を発した。

「あはは!なんすかそのやる気のない声!」

「あぁ!?てめー誰に向かって口聞いてんだこら!!」

「・・・うわぁ。酒乱ですね。」

苦笑いのルピタをじぃっと見つめるエースは、次の瞬間ゲフっと一つゲップをする。

「うっわ!お酒臭い!何杯飲んだんですか!まったく・・・」

エースは眉間にシワをよせ、未だじぃっとルピタを睨むように見つめていた。

「ぷぷっ。なんですかその顔ー!なんか酔ったエース隊長っておもしろーい!!」

指をさし、あはは!と笑うルピタの腕をグイッと引き寄せる。
彼女が持っていた酒瓶がするりと落ち
ガシャンと音を立て飛び散る。

面前にまで迫ったエースの顔。
それは真剣そのものでルピタは目を泳がせた。

「エ、エース隊長?すすすすんません!!!怒ってますでふか!!?」

「いいかよく聞け!」

「はぁぃい!!!イエッサーー!!!」

「俺ァ一回しか言わねぇぞ?」

「耳くそかっぽじってよーく聞きます!!」

「絶対、怪我すんな」

「は、はぃ」

「絶対、戻ってこい」

「・・はぃ。」

そこまで言ったエースは眉根を寄せて唇を噛み締める。
彼の脳裏にフラッシュバックするあの時のルピタ。
ボロボロになり、酷いやけどを負い
それでも自分を守ろうとした彼女の姿。

「お前が傷つくとこ、もう見たくねぇんだよ。」

「・・・エース隊長」

一瞬。ルピタの腕を掴むエースの力が強くなった。

「エース隊長。大丈夫です。私達は話し合いしにいくだけですもん!だから」

ルピタがそこまで言いかけたその時。
するりとエースがルピタの腕の拘束を解き、バタンと倒れる。
そして聞こえてくるのはいびき。

「あはは。寝てるし」

ルピタは、ぐおーっと口を開け眠るエースの寝顔を見つめながら
満面の笑みで笑った。

「ほんっと、過保護だなぁ・・・でも」

ルピタそう言いながら屈むと、フフっと笑いを漏らす。

「そこがエース隊長の良いところでもあるんですよー」

眠るエースに語りかけるようにそっと呟いて、ルピタは満点の星空を仰いだ。




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