いつからだろうか。

気づけば俺にはルシファという名前が与えられ
そしてこの世に生を受けた時から
悪魔と共存していた。

でも記憶が曖昧で
気づけばルシファという名で呼ばれ
微笑まれ
その大きな手で頭を撫でてくれる人々がいた。

その力に気づいたとき。
俺を家族と呼んでくれていた人達の顔は
恐怖で歪んでて。

次の瞬間。
真っ赤になった。

どうして自分の瞳が他と違って赤いのかは
きっと血を沢山見てきたからなんだって
幼心におもったんだ。





「ゼハハハ!!!帰ったかルシファ!遅かったじゃねぇか」

「・・・ちょっとね」

ここは黒ひげ海賊団の船。
甲板に降り立ったルシファを出迎えたのは酒瓶を片手に持ったティーチだった。

「オヤジは元気にしてたかぁ?」

「オヤジ?ああ。あのヒゲのおっさんね。元気なんじゃない?」

「なんだ。機嫌わりぃのか?上物の酒が手に入った。飲もうぜ!」

ティーチはそう言ってルシファを連れて行く。
その先には黒ひげ海賊団の面々が揃っていて皆酒を楽しんでいた。

「まぁ飲めルシファ!」

上品なワイングラスに注がれたのは綺麗な赤。
ルシファは何も言わずユラユラ揺れる
赤に映った自分の顔を眺めていた。

「おめぇが居ねぇ間に商船を襲ったんだ。そしたらよこんな上物が手に入っちまった」

ゼハハハ。と特有の笑い声がルシファの鼓膜を揺らす。
一口飲んでみれば渋くて飲めるものではなかった。
もともと酒という類が嫌いなルシファはそれに顔を歪める。

「なんだぁ?酒も飲めねぇのか?」

「やっぱガキだな!」

船員の中にはルシファをよく思っていない面々も多い。
嫌味が込められたその野次を飛ばす船員をギロリと睨みつければ、船員達は急いで視線を逸らした。

「さぁてルシファ。偵察の報告を聞こうじゃないか」

「報告?あー。温かったよ」

「温かった?」

「家族だとか、絆、信頼、最終的には俺が家族を求めてるとか、くだらねぇ勘違い」

報告というよりはブツブツと愚痴を垂れるような口調。

「ゼハハハ!つぅことは相変わらずってぇとこか」

「昔、俺にも家族がいた。いや。正確には家族だったのかどうかもわかんねぇ」

いきなりの的外れな話にティーチは呆気に取られる。
自己中心的というか、このルシファという青年は時々会話が噛み合わない。

「ほ、ほぉ。おめぇの家族の話か」

「覚えてんのはよぉ。その手で俺の頭をわしゃわしゃ撫で、笑って名を呼んだ事ぐれぇだ」

「ゼハハハ!!そうかぁ。珍しいなおめぇが自身の事を話すなんて」

「でもさ。俺が殺した」

「は?」

その回答にティーチが間抜けな返事を返せば
次の瞬間ルシファが持つワイングラスがバキンッと割れる。
ぽたぽたと床を汚すワインと血の色は
ほぼ同じ色だった。




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