『ポポミルクのミルクティーじゃよ』

オババから渡されたのは暖かなミルクティー。

『驚いたよ。散策に出ていた村人が偶然あんたらを見つけたんだ。吹雪がもう少し長引いてたら死んでいたよ。運が良かった・・・』

『申し訳ない・・・』

ルーカスは眉を寄せこうべを垂れる。

『あれはウチの孫のアーティアじゃ。あんたが眠ってる間あの赤ん坊をずっと世話しとったよ。それにしても生命力のある赤ん坊じゃ!』

オババは先程の少年を指差し声をあげて笑う。
ルーカスはルピタをあやすアーティアを見つめ、ふとカップに視線を落とした。

『何があった。旅人よ』

『え?』

そう聞くオババの目は真剣だった。
ルーカスは瞳を伏せる。

『伊達に長く生きちゃいない。あんたのその目は相当な事があった目だ。話したくないというなら話さなくていい。話したくなるまで話さなくていい』

オババの言葉にルーカスは堰を切ったように語り出した。
今まであったことを全て。
妻のこと。
ルピタの双子の弟のこと。
そしてここまでの経緯。
オババはただ
うん、うん。と聞き
ルーカスが話終われば

『辛かったねぇ』

と眉を寄せた。

『黒き翼を広げ、闇は消えることなしに。
それは器を探し、何度でも転生を果たすだろう。その時。世界は闇へ落ちる』

オババはそう言ってルーカスに視線を向けた。

『むかーしに聞いた話じゃ。あんたの子供。そして奥さん。この昔話に出てくる器。残酷な運命じゃ』

暖炉の薪がパチパチと燃える。

『ワシは今から残酷な提案をする。あの子の母親はこのポッケ村にいた村娘で、あの子を産んですぐに病で亡くなった。だから兄弟もいない。このポッケ村で共に生きぬか?過去を捨てて』

『過去を、捨てて?』

ルーカスは持っていたカップを握り締めた。

それはリエッタも、ルシファも居なかった事にするのだ。
ルーカスは瞳を閉じた。

『直ぐにとはワシも言わん。ただあの子が大きくなったとき・・・背負うモノが大きすぎる。』

オババの瞳はルピタに向けられていた。



『少し一人にさせていただけますか?』

ルーカスの返事にオババは黙って頷くと
アーティアとルピタを連れ部屋を出た。




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