何処でもいい
遠くへ、遠くへ。

ルーカスとルピタを乗せた荷車は
ガタガタとフラヒヤ山脈を走っていた。
宛などなかった。
ルーカスは最初で最後の家族写真を見つめながら
ただただ揺られた。

『お客さん。すまないにゃ吹雪が酷くてここまでしかすすめないにゃー』

『ありがとう。ここでいい』

『降りるのかにゃ!?この先どうするにゃ!!?』

『宛なんてないさ』

運転手にそう告げたルーカスは吹雪の中へ消えていった。
死のうとも思った。何度も、何度も。
しかし残されたルピタを見れば
それも出来ずに何度も泣いた。
今のルーカスには何も考えることすら出来ずにいた。
ただ猛吹雪の中を宛もなくさまよう。
この吹雪が自分達の命を奪ってくれたら。
とさえ願ってしまった。

それでも生きようと、腕の中のルピタは泣き声をあげるのだ。

『すまない。すまない』

ルーカスは膝をつきルピタを抱きしめたまま倒れた。





ふわりとしたミルクの匂いがルーカスの鼻を掠めた。
うっすらと瞳を開けば幼い少年がこちらを見ている。

『オババー!!オババー!!起きたよ!ハンターさん起きたよ!!』

少年はそう言って叫んでいた。
ルーカスは見知らぬその天井をぼんやりと見つめハッとする。

『ルピタ!』

すると少年は揺り籠からルピタを抱き上げルーカスの元へと連れてきた。

『ルピタってこの子?かわいいね!』

ルーカスはすやすや眠るルピタを見つめ、溢れる涙を止められなかった。

『ハンターさん!?ごめんね!僕なにかしちゃった?』

あたふたする少年にすまない。とだけ発して
ただ泣く。
すると部屋に一人の老婆が入ってきた。

『やっと起きたかい?旅の者よ』

『・・・あなたは』

『ワシはここじゃあ皆からオババと呼ばれとるただのババアじゃ。ここはポッケ村。そしてこのババアが村長』

そう言ってオババはしわくちゃの顔を綻ばせた。



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