その頃ギルドナイトは赤子であるルシファを連れ歩んでいた。
泣きじゃくるルシファを見たあの女性隊員が口を開く。

『・・・間違っている。やはり間違っています!!』

すると隊はピタリと止まった。

『ギルドナイトは世のために存在する影。しかし私達のしていることは・・・ただの』

『いい加減にしろ!!!』

隊長の怒号に隊員は口を閉ざす。

『まだ任務は終わってはいない。赤子は双子。その片方を探し出す。』

『隊長も、分かってるはずだ・・・。』

『まだ異論があるのか?』

『隊長もこの任務が間違っていることをっ、わかっているはずです!!だから、だからその赤子を殺さずに・・・』

『・・・』

すると隊長は泣きじゃくるルシファを地面へ置く。
そしてその背に背負ったランスを抜いた。

『変更する。赤子はどちらも始末することにした。今ここで片方を始末する。もう一人の赤子も見つけしだい即座に始末せよ。』

『隊長!!』

その時だった。
地に響くような唸りが聞こえた。
何かの咆哮のようなそれは辺りをざわつかせる。

『なんだ!?今の咆哮は!?』

『この辺に何かいるのか!?隊長早めに・・・』

隊長はランスの矛先をルシファに向ける。
その時だった。
その赤子は泣くのをピタリと止め、にやりと笑ったのだ。
赤い瞳が弧を描く。

『愚かだ』

その赤子は確かにそう放ったのだ。
その瞬間。
辺りが夜よりも深い闇に包まれる。





『はぁ、はぁ』

ルーカスは怒りに我を忘れギルドナイトを探し回る。
そこでツンと鼻につく鉄臭さ。
それは血の匂いだと一瞬で理解できた。
その方向へ歩みを早めたルーカスの目の前に広がったいたのは。

真っ赤な、真っ赤な血の海。
鼻を覆いたくなるような鉄臭に顔をゆがめ
片手で塞ぎながら近寄れば
そこにはギルドナイト達の死体が散乱していた。

『こ、これは』

そしてそこにいたのは見たこともない黒き化物。
ルーカスに振り返ったそれは確かに言った。

『器をありがとう。・・・パパ』

そして一瞬で消えたのだ。
ルーカスはヘタリとその場に座り込む。
カタカタと震えた四肢。
あれは紛れもない自分の我が子。

ルシファだと確信したからだ。

憑きものがあろうがなかろうが
我が子だ・・・。
そんな我が子に今恐怖した自分がいた。

ハッとして辺りを見回せば木にもたれる
ギルドナイトの一人。
あの女性隊員だった。

顔に大きな怪我をしていたが
呼吸をしている。

その一人へ近づくとルーカスは
しゃがみこむ。
そしてその胸ぐらを掴んだ。
すると隊員はうっすら目を開き
ほくそ笑んだ。

『殺せ。間違いを止めることが出来なかった私を。殺せ』

ルーカスは唇を噛み締め、剥ぎ取り用のナイフをその隊員の首筋に当てた。

そこに流れた沈黙はほんの数秒だったが
ルーカスにとってとても長い時間に感じられたのだ。
力なくナイフを落とすと
抑えきれない涙をポロポロと流し

『貴様を殺しても、妻は戻らない』

掠れた小さな叫びを放ったのだ。

ルーカスはその隊員に軽く応急処置をしてやるとフラフラと村へ戻る。




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