ざわざわと聞こえる村人の声。
すすり泣く声も聞こえた。
それは我が家の周りで発せられていて
ルーカスはヒヤリとした汗が吹き出す。
一歩、また一歩。
我が家へと近づき
放心状態の村人をかき分けた先にあったのは
真っ赤な血の海。
そこに倒れていたのは
紛れもない愛しき妻で
きっと這って外へ出たのだろう。痛々しいその跡が赤く地面を汚していた。
『リエッタ!!!』
駆け寄れば彼女はまだか細く息をしていて、その綺麗な瞳には
ゆらゆらと涙が溜まっては落ちる。
『あ、な・・た』
『喋るな!医者を!!早く医者を!!』
周りの村人へ叫ぶが、皆わかっていたのだろう。
もう彼女は手の施しようがないことを。
『いい、の。・・・これ・・が、あの、子と
、わた、しの、うんめ、い』
『ルシファは!?まさか・・・!!』
リエッタはギュッとルーカスの服を握り締め、眉を寄せる。
『あ、な、た。わたし・・・しあ、わ、せ、で、した。』
ふわりと微笑んだ後。リエッタの手はするりと落ちていく。
それは彼女が息絶えた瞬間だった。
『ギルドナイトだ・・・』
村人の一人がポツリと呟く。
『ギルドナイト?』
『すまないルーカスさん。見ちまったんだ・・・ギルドナイトがあんたの家を訪ねて来てそれから・・・俺怖くて何もできなかった!!』
ルーカスは立ち上がるとフラフラと我が家へ入っていった。
そこには争った跡と血痕。
無論もう一人の我が子であるルシファの姿はない。
ルーカスは防具一式と大剣を背負うと
村人の一人にルピタを託した。
そしてリエッタの亡骸を抱えると
その頬にキスを落とし、そっと自室のベッドへと寝かせたのだ。
『すまないがルピタを頼む』
『え?まさかルーカスさん!あんた・・・!!』
『まだ遠くへは行っていないはずだ』
ルーカスはそう言って、止める村人に背を向ける。