その日ギルドナイトのある小隊はある村へ向かっていた。
極秘の任務。
依頼主の名は明かされなかった。
なんとしてでも、ある一人の赤子を殺さねばならないという。
ギルドナイト小隊の皆は無言で歩き続けた。
誰も口を開こうとはしない。
今から自分達がすることは
任務といえどまだ幼い命を絶つことなのだ。
『隊長。』
そこで一人の隊員が口を開く。
『なんだ?』
隊長は留まりその隊員を振り返った。
『今から私たちがすることは、果たして正しいことなのでしょうか?』
『・・・正しいか、正しくないかを決めるのは我々ではない。我々が遂行すべきはそれを決めることではなく任務を速やかに遂行することだ。』
隊長はそれだけを隊員に告げるとまた歩みを再開する。
まだギルドナイトに入りたてのその隊員は唇を噛み締めた。
ギルドから言い渡された任務はこうだ。
ある一家にいる赤子を殺せ。
双子の可能性が高いため、もしもの場合は
家ごと焼払え。
抵抗する者あれば容赦なく始末しろ。
『私は・・・』
『なんだ?まだ何か異論があるかね?』
『それが正しいと思えません』
震える声で告げた隊員に隊長は近づくと
思い切りその隊員を殴りつける。
頭部の防具が外れ、顔を晒したのは
ギルドナイトには珍しい女性だった。
『貴様。ギルドナイトは何の為に存在するか忘れたか?絶対に失敗不可の任務を遂行すべき為の存在だ。貴様がその輪を乱すというならばこの場で貴様を殺す』
隊長は腫れ上がった頬を抑える隊員を冷たく見下ろした。
隊員はそれから目を逸らすと頭部の防具をつけ直し列へと戻る。
『それでいい。ギルドナイトは時に残酷にならねばならない。人が出来ぬ任務を遂行する。それが我らギルドナイトの役割なのだから』
『おぎゃああ!おぎゃああ!』
夜中。赤ん坊の声がこだまする。
それはルピタのもので、その隣で弟であるルシファはすやすやと眠っていた。
『ルピタは夜泣きが酷いわね』
『赤ん坊は泣くのが仕事だからな。リエッタ君は休んでいなさい。俺が少し外に散歩に連れていくよ』
ルーカスはルピタを優しく抱くと外へ出た。
ひんやりとする夜風に、まん丸と輝く月。
『よーしよし。パパがお外に連れてってやるからな』
そう言って森に向かい歩き出す。