ある日の晩。それは訪れた。
今まで一定の所で終わっていたあの夢の続きをリエッタは視てしまったのだ。

怪物は殺戮を繰り返し、人々を恐怖のどん底に突き落とした。
しかしそこに若い僧が現れたのだ。若い僧は自分が連れてきた生後間もない孤児にその怪物を封じ込める。
その孤児はその封印のせいで髪は漆黒に、そして瞳が赤く変化した。
そして背中には竜を象ったようなアザがついたのだ。
その孤児は神として秘境の神殿に奉られる。
しかしそれは忌み子として秘境に隠されたという方が正しかった。
その子は歳を取るのがとても遅く、成人するまでに何百年も要した。
まるで化け物だ。
その忌み子の名は"リエッタ"。

そこで夢は終わった。
リエッタは悲鳴をあげて飛び起きる。
その日任務に赴いて側にいないルーカスを思っては一人泣いた。

その次の日だった。
朝早くそれはやって来た。
天空山を守る村。シナト村の使者がリエッタを訪ねたのだ。
その使者はあの夢に出てきた僧によく似ていた。



全てを知ったリエッタは、抵抗することなくその使者に連れられシナト村に赴いた。

『改めまして。私は大僧正を務めます、シャマンと申します。』

その使者は大僧正シャマンと名乗った。
リエッタは半ば放心状態で腹に宿る命を撫でながら頷く。

『全てを知りましたね?リエッタさん』

『・・・ええ。しかし私が悪いのです。この子達は何も悪くない』

『・・・貴女には酷ですが真実をお話ししましょう 』

シャマンの話はリエッタにとって心臓を抉られる程の衝撃だった。
何故なら自分に封じられたその怪物は、リエッタが出産を果たした途端にその子に乗り移るというのだ。
リエッタが宿した双子。そのどちらかに宿るかは誰も分からない。しかし宿った方の子を何もわからぬ赤子のうちに殺さねばならない。


『私の先祖が大変申し訳ないことをした』

シャマンは深々と頭を下げた。
リエッタにその姿は映らない。

リエッタは、大僧正シャマンが守る天空山の禁足地で出産をすることになった。
その禁足地こそ、あの怪物が壊滅に追いやった村の跡地なのだ。



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