きっとギルドでは大騒ぎになっていることだろう。
しかし、この未開の地で行方不明になったハンターは沢山いる。
1週間もすれば捜索は打ち切られ、そして1ヶ月もすればいとも簡単に死亡判定が言い渡される。

『俺はここで終わるのか?』

聞いたこともない鳴き声を遠くで聞きながら、ルーカスはボソリと呟いた。

『それにしても古い遺跡だ。ああ。こんなことにならずここを見つけられていたら、きっとすごい評価を得られたのに』

ルーカスは自嘲気味に笑って深い深いため息をつく。

『・・・あの』

そこへ響くのはか細い女の声だった。
ルーカスは慌てて上体を起こすと、痛む脚に顔を歪める。

『ダメですよ!まだ動いちゃ・・・!』

女は咄嗟にルーカスに駆け寄り、そっとその体を支える。

『あ、あんたは・・・』

ルーカスはそこまで言いかけてグッと言葉を飲み込んだ。
何故ならその女は見たこともない美女だったからだ。あまり女に免疫のないルーカスが顔を真っ赤にさせるのに時間はかからなかった。

漆黒の艶やかな髪に、見たこともない赤い綺麗な瞳。
それはまるで宝石のように輝いて見える。
透き通るような白い肌。細い腕が自分の肩を抱いていると分かった瞬間。ルーカスは折れた脚のことなど忘れて飛び上がった。

『いでぇえ!!』

『大丈夫ですか!?』

『だ、大丈夫!だからこれ以上近づかないでくれ!』

ルーカスの言葉に女は驚き、そして悲しそうに瞳を伏せる。

『すみません・・・』

『あ、いや!違うんだ!その、えと』

ルーカスは自分が咄嗟に放った言葉に後悔した。
しかし謝ることも出来ずに目を逸らす。
そんなルーカスに差し出されたのは見たこともない薬草だった。

『これ・・・』

『これは怪我に良く効く薬草です。』

『・・・もしかしてこの手当て。君が?』

ルーカスの問いかけに女はこくりと頷くと悲しそうに笑う。
薬草に手を伸ばし、それを骨折した脚に当てれば
痛みがすぐに引いていった。

『すごい・・・』

女はそれを見届けると、またすぐに何処かへ向かう。
辺りが薄暗くなった頃今度は沢山の果物をルーカスの前へ差し出した。

『どうぞ』

女はそう言ってまた悲しく笑う。




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