小説 | ナノ

「ああ・・・」

私は家に帰ってしばらく。
アドレスが書かれた紙を眺めながら悶えていた。

まさかあんなイケメンに
しかも初対面で
連絡先を渡されるとは!!
今までの人生の中で
初かもしれない・・・。


「あ、電話しなきゃ」

家に着いたら電話するって約束をすっかり忘れていた。
私は急いで番号を入力すると、通話ボタンを押す。
そこで気づいた。
一体何を話せば?
しかも、さっきおもっくそ恥ずかしい感じになってるのに。

「・・・」

掛けてから後悔!
ちゃんとシュミレーションしてからにすればよかった!!!
そんな私を待ってくれるハズもなく。
ツーコールめでエースさんが電話に出たんだ。

「はい」

「あっ!あの私さっきの・・・」

「え?、ああ!サキか!」

「はい!」

「ちゃんと家着いたか?」

「はい。おかげさまで。さっきは、その、すみません」

「はは!いいって!あ、また来てくれよ?待ってるから」

おやすみ。と言って電話が切れた。
なんか営業っぽい感じもするが、この際営業でもいいって思えるほどのイケメンボイスを肴に
焼酎をいただくことにした。


その日。
私は何時に寝たかも分からない。
気づいたら夢の中だった。
なんで夢なのか分かるかって?
そりゃあ、あれだ。

私の目の前に
私とエースさんがいるからだ。
まるで第三者から見たような光景が私の瞳に飛び込んでくる。

エースさんは私をそっと抱き締めて
なにかを囁いて
そのまま私に
キキキキキキスを・・・。

そこで聞きたくもないケータイの音が耳をつんざいた。
ハッとして起き上がる。

テレビはつけっぱなし。
机の上に広がるおつまみのサキイカ。
そして、化粧も落とさず寝てしまった残念な私。
そんな私は焼酎のボトルを抱き締めて眠っていたらしい。

窓の外はもう明るくて・・・

私は夢で見たあの光景を思い出して赤面した。

「めっちゃ飢えてるじゃん。私」

昨日会ったばかりのエースさんとあんな事してる夢を見るってことは
私かなり飢えてるんだ。
そう思ったらなんかすげー空しくなってしまう。

プチ傷心な私を引き戻したのは
ケータイの着信音だった。
この音だ。私を幸せでムフフな夢から覚ましたのは。

「はい、もしもし・・・」

「なぁにやってんだーーー!!!」

部長の怒鳴る声が耳をつんざく。
咄嗟に電話を耳から話してしまった。

「何ですか!部長!朝っぱらからっ!」

「寝ぼけとるのか!君は!!今何時だと思ってる!!」

「へ?」

私は部屋の時計を見て絶叫した。
時刻は午前11時。
言い訳などできない。紛れもない遅刻・・・。

「どぅあああああ!!?」






| top |
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -