それは必然だったのか?
それとも偶然か。

いや。運命だ。
少女はそう思って
愛しい彼を追い続ける。


彼女の名前はなまえ。
このグランドラインにある小さな島に唯一あるパン屋の店主だった。
それはつい最近のこと。

この島が白ひげの縄張りになった。
白ひげは四皇とも呼ばれるこの世界最強の海賊で
そのことは田舎娘のなまえも
よく知っていることだった。
そしてその白ひげの船にのる船員も
名だたる賞金首で
その大きな海賊の縄張りになるというから
村の村長も大騒ぎで船を迎えた。

その時である。
いつものようにパンを焼き、店頭へ並べ
客が来るのを待つなまえ。
そこへ1人の男がやってきた。

まだ開店前。
なまえがやんわりとそれを伝えようと、厨房から出れば
そこにはある意味有名人が立っていたのだ。

「うまそーな匂いだな!」

「え、あ、あなたは!!」

そう。
それは白ひげ海賊団の二番隊をまとめあげる隊長。
世間ではその能力から
火拳エースとも呼ばれる

ポートガス・D ・エースだった。

「あなた、火拳のエースさんですよね!」

「おぅ!あ、わりぃまだ準備中だったのか?」

そう言って困ったように笑う彼は
世間でも
いわゆるイケメン層に入る
整った顔立ちをしている。
そのためか、海賊という立場でありながら
彼の手配書を見た世の一般女性がファンになる。
ということも少なくない。

「あ、大丈夫ですよ!そうだ!」

なまえは厨房からまだ試作段階のパンを
大量に持ってきた。

「これ!よかったら・・・。まだ試作品なんですけど、焼きたてなので」

「マジ!?これ全部くれんのか?」

キラキラと目を輝かせるエースは、海賊というよりか少年のようだ。
なまえはそんなことを思いながらも、紙袋にパンを詰めてエースに渡す。

「あ、よかったら1つ味見してみてください!感想が聞きたいので」

エースは紙袋から1つパンを取り出すと、それを一口。
するとその味わった事のないモチモチ感に
目を見開く。

「うめぇ!!マジうめぇよ!!」

「ほんとですか!?よかった」

「おぅ!こんなうめぇパン初めてだ!」

「嬉しいです!ありがとうございます!」

「ここにあるパン。全部買う!!売ってくれるか?」

その言葉になまえは目を見開いた。

「え?全部ですか?」

「おぅ!モビーの皆や、オヤジにも食ってもらいてぇからよ!ダメか?」

「と、とんでもない!!むしろ申し訳ない!」

頭を下げまくるなまえに、エースは笑う。

「こんなうめぇパンだったら毎日食いてぇな」

「え?毎日?」

「おぅ!毎日食いてぇ!あ、これ金な?釣りはいらねぇからよ!またこの島に来たときに寄るよ!」

エースはそう言って、大量のパンを持ち店を出ていった。

なまえは唖然としながらも、その後ろ姿を見送る。
そしてエースの言葉が頭に駆け巡るのだ。

毎日食いてぇな!
まいにちくいてぇな!


毎日。食いてぇ。


エースさんは、私のパンを毎日食べたいんだ。
私のパンを毎日。
毎日。

まさかこれって。

プロポーズ!!!!

なまえによるなまえのための
壮絶な勘違いが始まった。

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