コーヒーに
ひとすくいのお砂糖を入れれば
ほんのりだって甘くなるのに


わたしたちに砂糖のような
甘い言葉を入れたって
こうも甘くはならない。

サッチがいれてくれたコーヒーに
砂糖をサラサラ入れながら
そんなことを思った。

「んだよ。ため息つきながら俺様がいれたコーヒー飲んでんじゃねーぞ?」

サッチが笑いながらそんなことを言っていた。
そんなのお構いなしに
わたしは深いため息を吐いたのだった。

「何?無視?おれ無視されてる?」

「ごめんねサッチ。わたし今すっごく悩んでるの。ほっといてくれる?」

「なんだよー!俺達の仲だろう?お前の悩みは俺の悩みだ!!話してみろみろー!」

サッチはいつもこんなテンションだ。
ムカつくテンションってこーゆう事を言うんだと思う。

わたしはサッチを一睨みすると、またため息を吐いたのだった。


「エースの事だろ?」

サッチがそんなわたしの目を見て言った。
コイツにはなんでもお見通しだ。

「やっぱ分かる?」

「ばーか。顔に書いてあるっつうの!だてにお前の幼馴染みやってねーから!」

そんなサッチにわたしは悩みを話すことにした。


わたしがこのモビーディック号に乗ったのは
サッチの誘いがあったからだ。
元々海賊に興味があったし、その辺のチンピラよりは喧嘩強いし、何より兄のような幼馴染みサッチがいたし
軽い気持ちでこの船に乗ったんだ。
そんなわたしを娘と呼んでくれるオヤジ。
そんなわたしを妹と呼んでくれる皆。

わたしは心底嬉しかった。

そんなある日
この船に人切りナイフみたいな野郎がやってきた。
奴の名はエース。
何でもオヤジの首を取りにきたとか、なんとか。
結局オヤジにぼろ負けで、船に乗ってからも隙を見てオヤジに挑んでってぼろ負けしてて
ばかだなー。ほんとばかだなー。
ってくらいにしか思わなかった。

そんなばかが、この船に乗る決意をしたらしく
背中に白ひげの刺青いれて、嬉しそうにしてたのが
ついこの間の事のように思い出される。
その時初めて
わたしは奴の笑った顔を見た気がするんだ。

あー。コイツ。
笑うとこんな顔するんだって。



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