それからなまえは、愛の追及という名の
ストーカー行為をしまくった。
時にエースの背後にピッタリとくっつき
時に停泊中のモビーに忍び込み
時にエースの部屋のベットの下に息を潜め
時に寝込みを襲う。

そんな二人の様子を、モビーのクルーは微笑ましい眼差しで見守った。
そのうち白ひげまでもが

「グラララ!結婚しろ!挙式はいつにする!?」

と突拍子もないことを言い始めてしまうくらいだった。





そして1ヶ月ほどが過ぎた。

エースは痩せた。

その日はよく晴れた日だった。
カモメが空を優雅に舞う。
そんな中モビーディック号は
あのストーカーが住む島を離れ
大海原を進んでいた。

「はー。やっと解放された」

「どーしたエース!」

項垂れるエースの元へ
サッチとマルコがやってきた。

「あの女。悪魔だぜ」

「何ー?"俺の彼女は悪魔級に美人で可愛い女なんだZE!"??てめー!のろけんのもいい加減にしろよ!!」

「ちょっとぉおおお!!何処をどう聞いたらそうなんの!?おかしいの!?頭と耳おかしいの!?」

「エースも、パン生地に包まれて暖かい家庭を築いていくんだな。喜ばしいことだよい」

「ちょっ!マルコまで何言ってんの!?嫌だよそんな家庭!!どっからどう見ても異常だよ!そんな家庭!!」

「そんなことないと思うわ!エース」

「・・・・いやぁあああ!!!!なんでこいつがのってんだよーーー!!!」


島にいるはずのなまえが、何故かサッチとマルコに並んで立っている。
エースは顔面蒼白だ。

「いやぁあああ!!!!あああ!!っおえー!!ゲホゲホ!!喉がーーー!!」

「うふふ。エース。そんな喜ばなくてもいいのに」

「そうだぜエース!お前らほんとラブラブだな」

「というか、なまえ。お前いつの間に船に乗ったんだよい。」

叫び過ぎて喉を痛めたエースを尻目に
マルコが正統な質問をした。

「あ、出航前に船体に張り付いて身を潜め、頃合いを見て上へ上ってきました!」

「何処の特殊部隊だよい」

「うふ。愛の特殊部隊ですよ。マルコさん!そうだ。これからこの船でお世話になることになりました。夫のエース諸ともよろしくお願いいたします」

「え?」

「まじでー!?じゃあこれから一緒に旅できるんだね!よかったなエース!!」

「ちょっ!ちょっ!ちょっとぉおおお!!てめー!なまえこのやろー!!オヤジの許可なくこの船に乗るの・・・」

「お父さんに言われたの。俺に早く孫を見せてくれよって」

エースは絶望の縁に立たされた。

ニコニコするなまえはエースに近寄ると、ぎゅっとその体を抱き締めた。
耳元で、

早く孫を見せてあげなきゃね?

と呟けば
エースの意識が一瞬飛ぶ。

「おいー!見せつけてくれるねぇ!」

「サッチ。俺達は邪魔者だよい。行こう」

「行かないでくれ!!頼む!」

エースの必死のSOSに振り向くサッチとマルコ。

「なんだよい。そんなに彼女ナシな俺達に見せつけたいかい?」

「くっそ。リア充爆発しろ」

サッチとマルコの視線がエースに突き刺さる。

そんなエースがふっと何かを思い付いた。
そして意を決すると
大きな声でなまえに叫ぶ。

「ふざけんな!俺が好きなのは・・・マルコだけだ!!!!」

その場が凍った。

「何言ってんだよい。エース。メラメラし過ぎて脳ミソ溶けたか?」

「マ、マ、マルコこそ何言ってんだよ!あれだけ愛を誓いあった仲じゃねーか!!」

必死なエースを見つめるマルコは、若干引いていた。
マルコの隣のサッチは、顔を真っ青にして
マルコとエースを交互に見つめる。

「・・・マルコさん」

「ん?なんだよい。勘違いしないでもらいたいが、俺は・・・」

「私と勝負してください!!エースをかけて!!」


エースはニヤリと笑った。
うまく引っ掛かった。
と・・・。
エースの作戦はこうだ。

なまえとマルコが戦ってる内にオヤジの元へ

オヤジに事情を話す。分かってもらえるまで話す。

分かってもらえたら、戦ってる隙に旅に出る。

ほとぼりが冷めた頃船に戻る。

エースは完璧だと思った。


案の定なまえはエースから離れ、マルコに詰めよっている。

「なんで俺とお前が戦わなきゃならないよい」

「なんでって・・・エースの愛を勝ち取るのはこの私です!!」

「だから、俺は・・・」

「問答無用ですよ!私こう見えて悪魔の実の能力者なんですから!!」

「「「え!?」」」

初耳な事態に、マルコ、サッチ、エースすらも動きを止める。

「私の能力。それはモチモチの実の能力です!!」

「モチモチの実?」

「まず1つ・・・。手軽にモチモチパンが作れる!!米粉パンだって自由自在です!!」

「無駄なスキルだな!!!」

エースは思わず突っ込んだ。

「そして2つ目・・・それは相手を無差別にモチモチにできる!!」

「なにそれ!!!恐い!!!」

エースは突っ込むのが止められない。

「こうなったら・・・!私から仕掛けます!いきますよ・・・」

なまえはそう言ってぐぐっと構えると
大声を張り上げた。


「モチモチのぉおお・・・・・バズーカァア!!」

「それどっかで聞いたことあるーーー!!」

エースの最大限の突っ込みが船内に響いた。



「おお!無差別にモチモチだよい」

「ホントだー。お肌がモチモチ。赤ちゃん肌」

「うふふ。どうですか?このモチモチのバズーカを食らって無差別にモチモチ肌になった敵は自分のモチ肌に夢中になって戦意喪失するんですよ!」

「すげぇ。モッチモチだ!・・・ってちげぇえ!!俺はオヤジのとこに・・・」


そう言って去ろうとするエースの肩を、マルコが掴む。

「どこいくんだよい。エース」

「え、いや。あの」

「とにかく誤解をといてもらおうかい?俺にはそんな趣味ないんでねい。お前と愛を誓いあうなら、その辺に落ちてる石と愛を誓いあうほうがましだよい」

「ひど!!それはさすがに酷い!!」

そんなマルコとエースの会話を聞いて、なまえは顔をキラキラ輝かせた。

「え!?そんな関係じゃないんですか?」











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