それからしばらくして、欠番だったニ番隊の隊長がエースに決まった。
わたしは四番隊の隊長補佐だし
エースはニ番隊の隊長。

この広いモビー内ではあまり接点もない。

さらに隊も違うとなれば・・・
と思ってた矢先。
何故かあっちから言い寄ってきたんだ。
きっとエースがサッチと仲良し。って事も影響してんだろうけど。
それからはどんどん仲良くなって

ある夜、告白をされた。
恥ずかしい話、わたしもエースの事気になってたから

これで晴れて恋人同士になったわけなんだけど・・・。


「ギャハハハハ!!お前って奴は結構乙女なんだなぁ!!」

「乙女な奴って・・・一応乙女なんだけど」

わたしの悩みを聞いたサッチが大声で笑った。
わたしはコーヒーを口に含んで、そんなサッチを睨み付ける。

わたしの悩み。
それは・・・。

「お前よー。甘い恋愛なんて漫画の中だけの話だぞ!?」


そう。
甘い恋愛がしたいんだ。
こう見えて、少女漫画が好きだったわたし。
今でもたまに読んだりするけど。

こう、なんていうの?んー。
毎日いちゃこらしたいとかじゃなくて
こう?雰囲気っていうのかな・・・。

エースはとにかく淡白っていうか
わたしが勇気を出して、愛してる?って
聞いても

『おぅ』

としか返してくれないし
たまにストライカーでデートしても
手も繋がない。
更には


『あー!これ美味しいね!』

『おぅ。そうだな』

『わ!エース。これも美味しいよ?』

『あー。そうだな』

『・・・』

『・・・』


ナニコレ。
付き合ってるって言える?
最終的には二人とも何も言わなくなるとか
末期じゃん!始まったばっかなのに
末期じゃん!!

まぁ海賊に甘い恋愛を求めてたわたしが馬鹿だったのか・・・
わたしも海賊だけどさ。

空になったマグカップを見つめて
わたしは思う。
コーヒーみたいに、砂糖さえ入れれば
甘くなるような
そんな都合のいいことなんか
この世にないって。

目の前のサッチはまだ爆笑してるし
わたしは部屋へ戻ろうと
そんなサッチを置いて食堂を出た。


ため息をつきながら甲板を歩いていれば、ドンっと肩を誰かにぶつけてしまった。

「・・あ、ごめ」

「・・・」

うわ。
今一番会いたくない人にぶつかってしまったらしい。
エースだ。多分任務から帰ってきたんだろう。

「お、おかえりー」

「おぅ」

「そ、・・・それじゃーね」

足早に去ろうとすれば、エースにぐいって腕を掴まれた。
そして無言でわたしを引きずってく
エース。

「ちょっ」

「・・・」

「なんとか言ってよ!!」

抵抗虚しく、わたしはエースの部屋へと
引きずられてった。


「な、なに!?痛いじゃん!」

「サッチん所にいたんだろ?」

「は?」

部屋に入るなり不機嫌そうにエースが呟いた。

「お前はほんっとサッチと仲良しだよな」

「だ、だって幼馴染みだもん!仲良しっていうか・・・」

そう言ったわたしの口をエースが塞いだ。
いきなりのキスにわたしは思わず目を見開く。
それは乱暴なもので、わたしの涙腺が緩むのに時間はかからなかった。

「っ!やめてよ!!」

エースの体を思いきり離した。
だってそうじゃん?
わたしの気持ちなんて、この人に届いてなんかない。
付き合ってるのに
今は他人より遠く感じる。

涙目のわたしを見てエースは一瞬驚いた顔して
わたしから目を逸らす。
いっつもそう。わたしから目を逸らすの。

「付き合ってる意味、あるのかな」

思わず零れた言葉。

「なにそれ?本気で言ってんの?」

「だってそうじゃん!エースは私の事なんか好きじゃないんでしょ!?なに言っても、短くしか返してくれないし・・・それに・・」

ボロボロ涙が勝手に溢れる。
わたしいま。
すっごくカッコ悪いよ。
そんなわたしをエースは少し戸惑いながら抱き締めた。


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