「俺が殺してやろっか?」
「――…あぁ、頼むよ」
相棒は笑った。血濡れたその顔で。
指を引くことが出来ないのは何てったって相手がこいつだからで。
「どうした、殺してくれるんじゃないのか?」
「は、お前んな死にたがりだっけか」
「いや、馬鹿みてぇに縋り付いてでも生き抜いて来たよ。だからこんな有様なのさ。」
両手を広げる彼の肩を汚す赤がまた深みを増して。
「じゃあなんで、今」
「お前さんが殺してくれるんならそんなに嬉しいことはねぇよ」
「なんで俺だ」
「馬鹿言え、愛してるからに決まってる」
なあ次元
頼むからそんな目で見るなよ
「…お前と俺は、相棒だったろ」
"だった"
自分で口にしといて目を見張った。そうだもう俺はお前とは、
銃口を向けあうことはあっても、背中を合わせることはない。
二度と。もう二度と。
「俺ぁずっとお前に殺してもらえるヤツが羨ましたかった」
ワルサーががたがた震える。
「能無しの馬鹿共に、お前のワルサーはもったいねぇだろ?」
怖いのか。あいつが。
「やっとお前に、ワルサーを向けて貰えるんだな」
それとも別れが怖いのか。
「なぁルパン」
…終止符を打とう。二人の時間の終止符を。この俺の愛銃で、お前の心臓目掛けてピリオドを撃つから、どうか受け止めてくれよ
「愛してる、ほんとだ」
「…俺もだ、次元」
指を引いた。
弾を放出する衝撃が肩を揺らす。
「っ…」
「…ルパン…」
「愛してる、ほんとさ」
空を一直線に貫いた弾丸は落ちて来やしない。驚愕に涙を零すこいつを、愛しく思わないでいれる方法があるのなら、誰か教えてよ。
「帰ろう」
「…ひっ、う、ぁあぁあ…!」
重なり合う死体を避けて、泣き崩れる彼の元へ歩む。
「だいじょーぶだいじょーぶ」
抱きしめてやった。
「ルパン、ルパン、俺は、俺は…っ」
「わかってる」
俺は別に殺しをしない泥棒ってわけじゃない。義賊ぶる気なんかさらさらない。
けど、だから、そして、でも。
殺し屋なんかに戻らせたりしないから。お前は、俺の相棒なんだ。
一緒に夢を見る、俺のもうひとつの目。
お前じゃなきゃ駄目なんだ。お前と俺じゃなきゃ。
…お前がまた闇に堕ちて人をどれだけ赤く染めても
「次元」
「っ…ルパン…!」
「「愛してる」」
死にたがりの黒。
(お前は俺のものだから)