Kiss You darlin'



キシリ、古びた床が軋んだ。目だけで空間を撫でると、俺の特等席が埋まってるのが見える。
「おい、ルパン」
2秒待ったが返事はない。ったく、と心中でため息をつきつつ歩みを進め、名を呼んだ彼の様子を確認した。瞼のシャッターを下ろし、腕を組んで寝息を立てている。
「寝てんのか」
長い睫毛がゆらりと揺れ、俺の問いに答えるようにルパンはまた柔らかな呼吸を続けた。
「なぁ」
彼が腰を沈める背もたれに、俺は腕をのせた。唇まで10cmも残らないような距離まで顔を寄せても、ルパンは睡眠のリズムを崩さない。
(…寝てる、よな)
眩しいくらいの目を閉じ、いつもべらべらと騒がしい口を閉じた、大人しい泥棒がなんだかやけに新鮮だった。とくん、と自分の胸が高鳴るのがわかる。病気にでもかかっちまったみてぇに、こいつに触れたくて触れたくてたまらない。自分でも厄介だと思うくらいに本音を言わねぇ俺の口が、世界中の全ての女を口説くその唇に引き寄せられる。

(だからって嫉妬なんかしねぇさ
柄じゃねぇ。…ただ)

音も立てず触れ合った唇。じわじわと追い立てる羞恥心なんて気にも止めず、こいつの感触をたっぷりと味わってから、ゆっくりと離れた。閉じていた瞳を少しずつ開いてルパンの表情を盗み見る。眠っているこいつは、あんまりにも綺麗で。毒は俺の中にすっかり侵食しちまった。
その口が、一体誰に愛を語ろうと

「キスしてるときは、…俺だけのもんだよな」

――なんて、
(…ばっかじゃねぇの!)

羞恥心が俺の中にゴールしてあぁもうマグナムの投げキッスで楽になりてぇと思うくらいに恥ずかしい。愛を囁いてんのは俺じゃねぇか馬鹿野郎。
やめだやめだ、さっさと引き上げ…

ぐいっ。腕が引っ張られて

「…いつだってお前のもんだよ?」
「ッ」

狸寝入りか畜生!


Kiss You darlin'
(本能ってヤツさ)



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